矢吹正道“本家”超え世界王者「死んでもいいと思っていた」人生懸けた拳でTKO奪う

 10回TKOで寺地拳四朗を破り、雄たけびを上げる矢吹正道 (撮影・高部洋祐)
 9回、寺地拳四朗(左)に右ストレートを浴びせる矢吹正道
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 「ボクシング・WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ」(22日、京都市体育館)

 同級1位の矢吹正道(29)=緑=が10回2分59秒TKOで王者の寺地拳四朗(29)=BMB=を破り、世界初挑戦で王座を獲得した。序盤からポイントで有利に立った矢吹が10回終盤に連打で王者を防戦一方に追い込み、レフェリーが試合を止めた。拳四朗は9度目の防衛に失敗。プロ19戦目で初黒星を喫した。当初は10日に予定されていた一戦は、拳四朗の新型コロナウイルス陽性により延期となっていた。

 令和のリングでジョーがケンシロウをどつきまわした。両者ダメージでふらつく10回終盤、矢吹が渾身の力でラッシュに出る。大流血の王者にロープを背負わせると、人生を懸けた拳を繰り出した。打って、打って、打ちまくった。レフェリーが試合を止め、新たな王者が誕生した。

 リング上で新王者はこの試合に込めた思いを明かす。「この試合で死んでもいいと思っていた。トランクスに子どもの名前を入れて遺言みたいに。生きて勝つことができました」。リングサイドの最愛の家族に向かって叫んだ。「見ての通り俺が世界一の男やでね!」

 17歳の時に長女・夢月ちゃん(11)が生まれ、その後、恭子夫人(27)と結婚。続いて長男・克羽くん(8)も授かった。若くして父親となり、上京してボクシングで成り上がろうとしたが、うまくいかず名古屋に戻り23歳でプロデビュー。本名の佐藤正道ではインパクトに欠けると、不朽の名作「あしたのジョー」の主人公にあやかりリングネームを決めた。

 今後はジョーが果たせなかった王者としての未来が待つ。しかし「この試合にすべてを懸けていた。これで引退してもいい」と今後は白紙を強調した。リマッチも想定される拳四朗については「申し訳ないですが、拳四朗選手は想定内の選手でした。また時が来たら絶好調同士で戦いたい」と話した。

 世界初挑戦発表から2日後の21年の七夕。夢月ちゃんは短冊に願いを記した。「パパが世界とれますように。そしてパパのかっこいいすがたとキラキラかがやいたベルトが見えますように」。試合前の控室では家族の写真を何度も見て決戦を待った。この夜、矢吹の腰に巻かれたベルトから最高の輝きが放たれた。

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