ＷＢＡ世界ライトフライ級王者の京口紘人（２６）＝ワタナベ＝とチーフセコンドで５０代の男性トレーナーが新型コロナウイルス感染症のＰＣＲ検査で陽性判定を受け、３日にインテックス大阪で予定されていた挑戦者の同級１０位タノンサック・シムシー（２０）＝タイ＝との３度目の防衛戦が中止となったことが２日、発表された。日本で世界戦が前日に中止となるのは初めて。全４試合が予定されていた興行が中止となり、チケットは払い戻す。

　日本ボクシング界に衝撃が走った。この日の午前に大阪市内で調印式を済ませ、計量もともに１回でパスして、あとは試合を待つだけだった京口とタノンサック。だが、夕方に同じ場所で会見が開かれ、日本では過去に例のない前日での世界戦中止が発表された。

　この試合はコロナ禍では世界で初めて有観客で外国人選手を招へいしての世界戦として注目されたが、王者がまさかの陽性判定。ＪＢＣの安河内剛事務局長は「（ＪＢＣの）ガイドライン上、仕方ない。ファンの方には申し訳ないが、感染予防の徹底ということでご容赦いただきたい」と話した。

　京口とトレーナーは無症状でホテルの部屋に隔離され、感染経路は調査中で保健所の指示待ちという。今回の興行では計量前に選手はＰＣＲ検査、セコンドとレフェリーはＰＣＲ検査より早く結果が出る抗原検査を受けたが、まずトレーナーが抗原検査で２度陽性となった後にＰＣＲ検査でも陽性になった。計量後に京口も陽性と判定された。

　ワタナベジムの深町信治マネジャーによると、京口は陽性判定を聞いたときに大きく落胆し、「そうですか。すみません」と言葉少なだったという。自らのツイッターには「本当にごめんなさい」と記した。

　ジムワークは大人数がいる時間帯を避け、１０台以上の扇風機で換気。抗原検査キットを購入してまめに検査をするなどの対策をし、１日に自主的に２度受けた検査でも２人とも陰性だったという。

　相手のタノンサックはタイから１０月７日の来日後、２週間の隔離を耐えての初世界戦だったが、目前で中止を知らされ涙を流すばかりだったという。両陣営ともタノンサックのビザの有効期限である１２月３１日までに同カードの実現を目指すと明言しており、「ショックですがチャンスが来るまであきらめない」と前を向いた。

　ワタナベジムの渡辺均会長は、この試合がスポーツ庁からは延期となった東京五輪のモデルケースになるような成功を期待されていると話していたが、裏切る結果となり「残念に思います」と力なくコメント。ユーチューブで生配信という国内世界戦では初の試みもお預け。新型コロナの怖さを思い知らされる結果となってしまった。