【長谷川穂積の拳心論】作用しなかった山中の“絶対当て勘”

 4回、ルイス・ネリに激しく攻め立てられる山中慎介。レフェリーが割って入りTKOとなる
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 「ボクシング・WBC世界バンタム級タイトルマッチ」(15日、島津アリーナ京都)

 王者・山中慎介(34)=帝拳=が同級1位ルイス・ネリ(メキシコ)に4回2分29秒TKO負けを喫し、具志堅用高の持つ世界王座13連続防衛の日本記録に並ぶことはできなかった。デイリースポーツ評論家の元3階級制覇王者・長谷川穂積氏(36)は山中の功績をたたえつつ、パンチの“絶対当て勘”が作用しなかった点を敗因に指摘した。

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 【長谷川穂積の拳心論】

 どちらが先に当てて仕留めるかというハイレベルな技術戦だった。1回は山中にとっていい距離だったが、予想外だったのはネリが前に出てこなかったことだ。もっとファイタースタイルかと思っていたが、技術で勝負してきた。

 特に山中の左対策をよく積んでいたのだろう。上体を後ろに引くスエーでうまく左の威力を殺していた。山中のすごさは相手がいいパンチを当てた後、さらにたたみかけてくる瞬間に自分の左を的確に当てられること。しかし、これもどこかかみ合わず、威力を殺されてしまった。

 試合を止められるまでクリンチに逃げなかったのは、限界ギリギリのピンチの中でも、自分のパンチが絶対に当てられるという本能があるからだ。僕も同じで、そういう場面でもクリンチせず打ち勝てる自信があった。周りから見れば危ない場面でも、自分には当てられる確信があり、実際に打ち勝てる。“絶対音感”のようなパンチの“絶対当て勘”が、この試合では作用しなかった。

 どちらが勝ってもおかしくない試合。今日はたまたまネリの夜だったが、明日は山中の夜だったかもしれないと思う。ただ、これがボクシング。一対一で戦う限りは、結果はどちらかに傾く。

 それでも、12度も防衛のプレッシャーと戦い、打ち勝ってきた山中の功績が消えるわけではない。本当にすごい選手だと改めて感じている。

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