小国、大金星 「耐え恥作戦」成功で無敵王者に判定勝ち 世界初挑戦で初戴冠 

 「ボクシング・IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(31日、島津アリーナ京都)

 IBFスーパーバンタム級5位の小国以載(ゆきのり、28)=角海老宝石=が、22勝22KOと無敗を誇っていた同級王者のジョナタン・グスマン(ドミニカ共和国)を3-0の判定で下し、世界初挑戦で王座奪取に成功した。小国は3回に左ボディーでダウンを奪って優位に立ち、防御も巧みで相手の強打を封じた。

 満身創痍(そうい)になっても、新王者はオモロイ男だ。勝利のコールを受けて、小国は「しんどかった~」と開口一番。序盤に左手親指の「腱が切れた」。中盤には右手を痛め、左耳の鼓膜が破れて聞こえなくなった。IBFの赤いベルトを巻かれても「しんどいな、この職業」と笑わせた。

 22勝22KOのグスマンへは「“耐恥作戦”。耐えて耐えて恥かきながら頑張りました」。元世界王者の内藤大助氏から助言された戦法を明かしたが、実際は計算し尽くした戦いだった。ワンツーで距離を保ち「ずっと練習してきた」という左フックを有効に使った。

 3回に腹に打ち込みダウンを奪うと、11回にも同様に相手を沈める。判定はローブローだったが、ダメージは明白。自らは巧みなステップワークで相手の強打を食い止めた。

 勝利の瞬間、誰より早くリングに上がった人がいた。掲げられたのは赤穂ボクシング協会の西川良一トレーナーの遺影。中学時代から基礎をたたき込んでくれた恩師を「世界のリングに上げたかった」。新王者が唯一、目を潤ませた瞬間だ。

 神戸市のVADYジムからデビューし、初黒星を喫した13年に新天地を求めて上京。旅立つ2日前、西川さんはミットを持ち『それでいい。世界、世界!!』と小国に言った。その直後に急死。終始乱れない美しいボクシングは西川さんの“遺産”だ。

 「負けたら引退と決めていた。でも、オレまだいけるやろうって言い聞かせていました」と小国。「こんな手になって鼻血も出てアホやと思います。でも、幸せやな」。“オモロ王者”は、最後の最後にまじめな素顔を見せた。

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