細川、初防衛失敗なら1カ月無償労働

 「デイリー後援・日本スーパーウエルター級タイトルマッチ」(8月10日、住吉区民センター)

 ボクシングの六島ジムは13日、日本スーパーウエルター級王者・細川貴之(29)が同級4位で元同級日本、東洋太平洋2冠王者の野中悠樹(36)=渥美=と8月10日に初防衛戦を行うことを発表し、大阪市内で両選手そろって会見した。

 普段から両選手はスパーリング相手を務め、手の内を知り尽くした者同士。“仲良し対決”で終われば何の盛り上がりもない。そこで六島ジム・枝川孝会長は温めていた秘案を会見で披露した。

 「負けたら野中選手は引退。細川は1カ月、渥美組で奉仕労働。がれき処理をしてもらう。ただでは大阪ダービーはおもしろくない。大阪の乗りでタイトル戦をしたい」。

 野中には王座奪取失敗なら現役引退を勧告。王者に対しては、防衛失敗なら挑戦者のジムオーナーである建設会社「渥美組」で土木作業員として1カ月の無償労働を厳命した。

 突然の“罰ゲーム”は、悲願の王者になり浮かれる細川の危機感をあおるためでもあった。「今のままでは負けるでしょう。細川は今さら加圧トレとかやっとる。パンチ力あるわけじゃないのにパンチ力なんか付くか!やること間違えとる。野中選手は世界を狙うと言っている。精神面で負けてるよ」と、会長からダメ出しのオンパレードだった。

 逆に挑戦者は5年ぶりの同王座返り咲きへ充実だ。6日、三田でのノンタイトル戦で岡山リョウ(グリーンツダ)に6回TKO勝利。「負ければ引退は心に秘めている。ここで終わるならボクシングをやっている意味はない。しっかり勝って世界につなげたい。年を取ってもスピード、パワーは落ちないことを見せたい。老かいにではなく、圧倒的に勝ちたい」と真っ向勝負を宣言した。

 豪華エールも届いた。リング入場曲を歌手の吉川晃司の曲を使用していることが縁で本人とも親交。今回もらったメールには、こう記されていた。

 「人生まだまだこれからが本当の勝負。これまで、多くの犠牲を払ってきた野中君なんだから、ここいちばん、とっとと勝っちまってステップ!ジャンプ!悔いの残らないファイトを。そして次は世界だ!吉川晃司」(原文まま)。

 さらに同王座は渥美ジムの大東旭会長代行が現役時代に10度防衛したベルトと縁が深い。大東代行は細川に「守り方の分からない初防衛戦は難しいんよ。俺も苦戦した」と、プレッシャーをかけた。

 枝川会長はかばうどころか「野中選手、チャンスやで。細川からベルト獲れるで」と追い打ちをかけた。六島ジム・武市トレーナーも「悪いけど野中さん応援するわ。細川より付き合い長いから」とあっさり突き放した。

 王者なのに、吹き荒れる逆風。「絶対、がれき処理はイヤです」と、追い詰められた王者に、ようやく火が付いた様子だった。

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