中華料理店症候群 頭痛・顔面の紅潮・腕の痺れ・動悸などを訴える→多くの大規模臨床試験が続けられ現在は否定
またまた変な病名をご紹介しましょう。「中華料理店症候群」という名前の病気があることご存知でしょうか?
通称「酢ブタ頭痛」とも呼ばれるこの疾患、中華料理を食べた人が、頭痛・顔面の紅潮・腕の痺れ・動悸などを訴え、「Chinese restaurant syndrome」 として、1968年に世界的な医学雑誌「New England Journal of Medicine」で紹介されました。
これは、中華料理に多く含まれる化学調味料のグルタミン酸ナトリウムが原因ではないかと疑われ、翌年には動物実験で視床下部などへの悪影響が指摘されたため、世界保健機関などにより1日の摂取許容量に制限がもうけられました。グルタミン酸ナトリウムを使った調味料の1つが日本の「味の素」で、うま味を出すための化学調味料として知られています。
私が小学生の頃、味の素は頭の発達に良いという説と、体に悪いという説で、意見が分かれていた時代です。その後アメリカで臨床試験が行われ、中華料理店症候群を経験したことがある人にグルタミン酸ナトリウムを大量に与えても症状が再現されず、グルタミン酸ナトリウムと中華料理店症候群の関係は証明できませんでした。
その後も多くの大規模臨床試験が続けられ、結局グルタミン酸の毒性は確認されないことが「Nature」や「Science」などの世界的な学術誌で発表され、2000年に中華料理店症候群は学術的に否定されました。ここまで書いておいて申し訳ないのですが、今は使われていない病名です。しかし、グルタミン酸そのものには血管を収縮させる作用があり、グルタミン酸ナトリウムを含む食品は片頭痛の原因の1つとしてあげられています。
日本救急医学会でも急性頭痛をきたす物質として認識されており、神経の興奮をきたすことは証明されているものの、頭痛を引き起こすメカニズムは解明されていません。余談ですが、最近では中華料理店で出される火鍋で一酸化炭素中毒が発生する事例が多く、これを新しい「新・中華料理店症候群」と呼んでいるそうです。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
