「冬季超過死亡」ってなに?最も死者数が増える季節 温暖な地域でもなぜ命が失われるのか
クリスマスやバレンタインなど、冬は華やかな行事が続きますが、実は1年で最も死者数が増える季節でもあります。この現象は「冬季超過死亡」と呼ばれ、厚生労働省の人口動態統計(2014年)によれば、12月から3月の死者数は他の期間に比べて17.5%も増加しています。
なぜ冬にこれほどのリスクが潜んでいるのでしょうか。要因の一つは呼吸器感染症の増加です。寒さと乾燥はウイルスの活動を活発にし、人体の防御機能を低下させ、インフルエンザ感染や肺炎などのリスクを高めます。
そしてもう一つの大きな要因が、循環器系への負担、すなわち「血管事故」です。
冬のライフスタイルは心臓や血管に過酷な環境を強いています。代表例が入浴時の急激な温度変化が招く「ヒートショック」です。暖かい部屋から肌寒い脱衣所へ、そして熱い湯船へ。この温度の乱高下が血圧の乱高下につながり、脳卒中や心筋梗塞を誘発します。また、運動不足や食生活の乱れも静かに健康リスクを押し上げます。日本特有の事故である正月の餅による窒息死もひとつの原因とされています。
ここで一つの大きな疑問が生じます。この現象は、厳しい寒さに見舞われる北国だけの問題ではありません。実は、冬が比較的穏やかな地域でも同様の、あるいはそれ以上の超過死亡が観測されているのです。寒くないはずの場所で、なぜ命が失われるのでしょうか。そこには、私たちの「住まい」と「意識」に潜む意外な盲点が関係しています。
冬の死亡リスクは自宅の環境に大きく左右されます。「温度のバリアフリー」を意識することは、命を守る第一歩となります。
では、なぜ暖かい地域ほど危ないのか。次号ではその謎の正体に迫ります。
◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。
