BMI25~29.9過体重の65歳以上は手術後30日間の死亡率低い BMI18.5未満の低体重では高い→米国から興味深い報告

 外科医をしていた頃、患者さんは適度に痩せてるほうが良いと思っていました。肥満は、手術中の出血量や術後の合併症を明らかに増やすからです。

 しかし、最近、この常識を揺るがすような興味深いデータがアメリカから報告されました。65歳以上の外科手術後30日間の死亡率は、BMIが25~29.9で過体重と分類された人たちがもっとも低く、逆にBMI18.5未満の低体重の人たちでは肥満や、高度肥満の人より高かったと報告されています。

 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。通常、高度な肥満では炎症性のホルモンが多く分泌されますが、中程度の肥満では、炎症を抑える抗炎症性のホルモンが一定量分泌され回復に貢献しているという意見があります。肥満患者は糖尿病、高血圧症など術前より合併症を抱えており、ハイリスク患者として術前、術後に比較的手厚く管理されていて結果的に合併症が減っているという考察もあります。逆に、痩せすぎている人々の場合は、栄養状態が不十分であることが多く、手術による負担に耐えきれずに合併症を起こしやすいと考えられます。

 もちろん、この結果をもって手術を乗り切るために太りましょうとはとても言えません。特に、BMIが35を超えるような高度な肥満は、依然として手術や麻酔の合併症リスクを明らかに高めることがわかっています。また、呼吸器合併症や血栓塞栓症のリスクは、肥満度が高いほど増加する傾向にあります。

 今回の報告は元外科医としては、にわかには信じがたいデータですが、確かにアメリカ型の食生活を送っていて太れない低体重の人は消化、吸収に問題があり、合併症を起こしやすいというのは納得できますね。

 ◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。 

編集者のオススメ記事

ドクター備忘録最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス