松尾貴史さんが罹患した「肺塞栓症」ってどんな病気? 帰省シーズンに気をつけたいエコノミークラス症候群

 タレントで俳優の松尾貴史さんが「肺塞栓(そくせん)症」で入院しました。肺塞栓症は心臓から肺に血液を送り込むための肺動脈に塞栓子(血管を塞ぐ原因となる物質)が詰まって引き起こされる病気です。塞栓子が血栓の場合は「肺血栓塞栓症」と呼ばれ、急性肺血栓塞栓症は「エコノミークラス症候群」の病名で知られています。

■肺塞栓症ってどんな病気?

 動脈が塞がって引き起こされる疾患が肺塞栓症です。その原因となる物質(塞栓子)には血栓、腫瘍、脂肪、空気などがあります。なかでも多いのが血栓によるものです。この血栓が原因の肺塞栓症のことを「肺血栓塞栓症」と呼んでいて、急性肺血栓塞栓症が「エコノミークラス症候群」とも呼ばれる病気です。

 肺塞栓症の症状としては「突然の咳」「息切れ」「胸痛」「ふらつき」「失神」など、さまざまです。心臓から送り出される血液の量が少ない場合や、心臓に過度の負担がかかった場合などは、ショック状態に陥ることもあり、死に至る危険性も高まります。

 松尾さんの場合は14日に開催されていた主演舞台「鴎外の怪談」の東京公演後に肺に違和感を感じて検査を受けたそうですが、命に別状がなく、よかったと思います。報道では、松尾さんも血栓を溶かす治療を受けているとありましたので、もしかしたら「肺血栓塞栓症」かもしれませんね。

■帰省の季節、エコノミークラス症候群には要注意

 前述したように肺塞栓症で最も多いといわれるのが血栓性ですので、年末年始の帰省シーズンには、急性血栓塞栓症であるエコノミークラス症候群には特に注意してください。

 このエコノミークラス症候群は、長時間同じ姿勢でいることで引き起こされやすいともいわれています。例えば、飛行機や電車、長距離バスなどの乗り物に座り続けることで発症する危険性があります。

 予防としては血栓ができないようにすることが大切です。長時間、座るような場合は同じ姿勢をとらず、定期的に立ち上がったり、足のマッサージをしたりすることが大切です。

 また、弾力性をもった弾性ストッキングを着用して足に圧をかけることも有効だといわれています。この他にも、脱水状態も病気を引き起こす要因となるため、水分補給はこまめにしてほしいものです。

■肺塞栓症の検査や治療法は?

 問診で肺塞栓症や肺血栓塞栓症などが疑われる場合は、血液中の酸素量(酸素飽和度)や血圧などを確認します。同時に、動脈血液ガス分析、胸部エックス線検査、心電図、心エコーの検査、胸部造影CT検査などを行い、判断します。

 治療としては、抗凝固療法や血栓溶解療法といった薬物療法などがとられます。重症の場合には、手術やカテーテル治療などで血栓を取り除く方法もとられます。エコノミークラス症候群などは突然発症し、重篤になる可能性もあるので、早急に治療を開始する必要があります。

 どんな病気にもいえるのですが、早期発見・早期治療が大切で「おかしいな」と思ったら、素人判断せず、松尾さんのように即、病院などに行くことが重要です。

◆尾原 徹司 東京医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センターを経て、神戸鐘紡病院消化器科に赴任。昭和57(1982)年に独立し、医療法人社団つかさ会「尾原病院」(神戸市須磨区妙法寺荒打/神戸市営地下鉄西神山手線妙法寺駅徒歩3分)院長に。

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