【松本浩彦医師】「食間」に薬を飲む…正しい意味をご存じでしょうか?

 以前、葛根湯医者という題で葛根湯のお話をしましたが、小柴胡湯とか半夏厚朴湯とか、「~湯」という名がついている漢方は、もともとが煎じ薬です。八味地黄丸とか当帰芍薬散なんてのもありますが、これも字のごとく、もともとは丸薬だったり粉薬だったりしたことの名残りです。なので「~湯」は熱めのお白湯で飲むことで、より高い効果が得られます。

 あと「食間」に飲むのが、漢方薬の本当のルールです。某医学部の基礎医学教室の教授(れっきとした医師です)が、食事の最中に薬を取り出して飲んで、呆れたそのお姑さんが新聞に投書した、という逸話が残っていますが、食間というのは食事の最中という意味ではありません。食事と食事の間、つまり空腹時に飲みなさいという意味です。だいたい食後2時間が目安です。

 なぜ食間なんでしょうか。実は多くの漢方薬に調合されている「人参」をブドウ糖と一緒に服用すると、ブドウ糖によって人参の成分が吸収されにくくなるのです。ブドウ糖は米やパンが分解されてできます。人参を含む漢方薬は非常にたくさんありますので、これらの漢方薬は食間に飲むことで吸収が良くなる、という科学的な根拠があるのです。ちなみに錠剤やカプセルは、空腹で服用すると胃や食道の粘膜にくっついて、潰瘍を起こす可能性があるため、食後に飲みます。

 ただ、食間とか、食前とかいうと、多くの患者さんは薬を飲み忘れてしまいがちです。日本人は特に、カゼ薬は食後に飲むもの、という観念が子供の頃から染み付いてしまっているのですね。ですので私は漢方を処方するときも食後と指示します。食後に飲むことで仮に効果が8割になっても、飲み忘れたら効果はゼロですから。

 ◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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