【中塚美智子医師】インプラントを入れたのに…気を付けたいインプラント周囲炎

 歯科治療で用いられるインプラントは、ほぼ自分の歯のような感覚で違和感なく使えるのが最大のメリットです。ただ、一部の場合を除いて健康保険が適用されないため、大きな金額を必要とすることもあります。

 悩みに悩んだ末、インプラントを入れようと決断された方、また、今まさにお悩み中の方もいらっしゃるでしょう。しかし、大きな決断をし、インプラントを入れ終えたら万事解決ではなく、その後のケアも重要です。

 インプラントは、簡単にいうと顎の骨にネジのようなものを直接埋め、その上に人工の歯をつけたものです。入れ歯のように取り外して洗うことはできませんが、「問題が起こらなければ」グラグラすることがなく、自分の歯のようにかめます。見た目も自分の歯と見間違えるほどでありがたいですね。

 しかし、十分なメンテナンスを怠ると細菌感染によって歯周炎と同じように「インプラント周囲炎」が起こる場合があり、インプラントを埋めている顎の骨が破壊され始め、インプラントは次第に揺れ出します。放置するとインプラントを支える骨の量が少なくなり、最悪の場合せっかく埋め込んだインプラントを撤去しなければならなくなることも。

 人間の歯は顎の骨と直接結合せず靭帯を介してつながっていますが、インプラントと顎の骨は直接結合しているために血流量が少なく、抵抗力が弱いため、炎症が悪化しやすいのです。また、インプラントには神経がないので初期はよくわからず、悪化して初めて気づく場合もあります。

 治療として、炎症の原因となった細菌の徹底的な除去を行います。歯科医師や歯科衛生士による専門的な清掃に加え、薬剤による洗浄や外科処置もなされますが、骨が溶けるのが収まらない場合、残念ながらインプラント摘出になることもあります。

 インプラントを長く保つため、口の中の清掃を徹底するとともに定期的に歯科医療機関でメンテナンスを行い、細菌感染を防ぎましょう。また歯周病や糖尿病の治療、禁煙も予防につながります。せっかくインプラントを入れたのに…と後悔しないためにも、日々のケアを大切に。

 ◆中塚美智子 大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、労働衛生コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士。

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