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【中塚美智子医師】堀ちえみさん公表の口腔がん 手術患者の「生きる力」を支える装置

 口腔がんの摘出手術を受けた堀ちえみ
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 タレントの堀ちえみさんが口腔がんの摘出手術を受けたことを公表されました。

 口腔がんの手術では、顎の骨や舌などを切除してしまう場合が少なくありません。話す、食べる、味わう、飲み込むといった、今まで普通にできていたことが不自由になるのは本当に辛い。顔かたちが変わってしまうこともあり、患者さんの苦しみは「筆舌に尽くしがたい」という言葉でも表すことができないでしょう。

 近年は手術の際、切除を最小限に止め、できる限り機能を残し、不自由になったところを人工の装置で補う治療が行われるようになりました(保険適用される場合もある)。

 私たちは話す時や物を飲み込む時などに舌や上顎を使っていますが、手術により舌が十分に動かなくなると、これらが難しくなります。「舌接触補助床」(ぜつせっしょくほじょしょう)は、舌を上顎に接触しやすくし、音を発したり物を飲み込んだりするのを助けるもので、上顎に付けて用います。

 顎の骨を切除すると歯もなくなり、かむことが難しくなりますね。特に上顎の骨を切除して鼻と口がつながってしまうと、話せないほか、口の中のものが簡単に鼻に入ったり、ストローで飲み物を吸うことができなくなったりします。「顎義歯」(がくぎし)は歯だけでなく顎の骨も補う入れ歯で、特に上顎では鼻と口の間を封鎖する役割も果たし、会話や食事ができるように働きます。

 「エピテーゼ」は、手術などにより目、耳、鼻、頬などが失われた時に、人工の目や皮膚などで顔のつくりを補うものです。単に目や耳、鼻の模型とは全く異なり、皮膚の状態や眼球の内部、複雑な耳の形などが忠実に再現されます。顔の一部を失った患者さんに対し、エピテーゼは外見や機能の改善のみならず、患者さんの気持ちの回復も目指す、本当に大きな意味を持つ装置です。

 これらの装置は歯科技工士が製作します。彼らの高い、精巧な技術が装置を通し、患者さんお一人お一人の「生きる力」を、そして医療を支えています。

 ◆筆者プロフィール 中塚美智子(なかつか・みちこ)大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、1級キャリアコンサルティング技能士。「歯科医療の発展が日本を元気にする」と信じ、日々未来の歯科衛生士、歯科技工士の養成に携わっている。

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