【谷光利昭医師】「この薬を飲んではいけない!」自己判断での拒否は危険

 「この薬を飲んではいけない!!」という衝撃的なタイトルとともに、我々医師が高血圧、脂質異常症、糖尿病、脳梗塞、狭心症などの患者さんに投与する多くの薬が記載されていました。「先生、この薬飲んでいても大丈夫なん?」。その雑誌が発売されてから数人の患者さんに聞かれました。「問題ないですよ」。私はみなさんにそう答えています。決して安易な選択でそれらの薬を投与していないからです。

 多くの成人病が生活習慣、特に食生活と密接な関係があります。病気の重症度、背景因子など様々な病態も考慮しなければなりませんが、来院される多くの患者さんには、まず、生活習慣、食生活の改善を提案します。できる限り内服をして頂きたくないからです。

 それでも治療が必要と判断して初めて血圧を下げる薬、脂質や血糖値を下げる薬などを投与します。また、インフルエンザなどの感染症や他の疾患に対しても極力少ない薬の投与を考えています。

 薬の投与が不可欠な患者さんもおられる一方、生活習慣の改善で減薬、廃薬ができた患者さんがいらっしゃることも事実です。生活習慣を少しでも変えて減薬、廃薬につながるように努力して頂きたい。これが基本的な考え方です。

 全ての患者さんがこれに当てはまるわけではありません。頑張っても変わらない人、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などの重篤な状態から生還された患者さんは、残念ですが、適切な薬をずっと飲み続けなければなりません。薬を中止することにより、重篤な合併症が起こったり、命の危険につながることもあるのですから。

 本当に様々な病態の患者さんがおられます。ただ、判断基準が異なることはあっても、医師が患者さんに不必要な投薬をすることはまずないはずです。冒頭にあるような一部の事実を拡大解釈した記事を鵜呑みにして、自己判断で投薬治療を中止、拒否するのではなく、主治医の先生とよく相談して、慎重に考えて頂きたいです。

 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。

編集者のオススメ記事

ドクター備忘録最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス