【中塚美智子医師】歯科衛生士が足りません!高まるニーズ 復職支援に現場も期待
「誰か紹介してもらえません?」結婚相手ではありません。おっしゃっているのは歯科医院の院長や病院、企業、施設などの人事担当者。今、歯科衛生士が本当に足りないのです。
従来歯科衛生士は診療補助業務のイメージが少なからずありましたが、口腔(こうくう)の状態と全身の病気との関連が徐々に明らかになり、より専門的な口腔ケアができる歯科衛生士の存在が大きくなってきています。特に糖尿病や誤嚥性肺炎など、口腔ケアをしっかり行うことが治療や予防に効果をもたらすものもあり、健康を保てる人々が増えるばかりでなく、高くなる一方の医療費を抑えることも期待されます。
また歯科衛生士はこれまで主に虫歯や歯周病の予防に関する処置を行っていましたが、近年はそれらに加え、いかに歯、顎、舌、筋肉をうまく動かし、食べることを楽しみつつ全身の健康を保ち続けるかということにも積極的に関わるようになってきました。歯科衛生士の業務の幅や活躍の場が広がり、ニーズはさらに高まるものと考えられます。
一方、2014年時点で、歯科衛生士の半数以上が歯科衛生士の仕事に就いていませんでした。労働時間や待遇など労働条件が合わない、知識や技術の不足、人間関係などがその主な理由ですが、もったいない、というより、労働力不足が叫ばれる中、国家にとっても大きな損失をもたらすのではないかと考えてしまいます。
数年前から全国各地で歯科衛生士を対象にした復職支援事業が実施されるようになり、厚生労働省受託事業として、現在、本学および東京医科歯科大学で研修が行われています。「復職支援研修をきっかけに歯科衛生士免許を取った日のことを思い出し、人のために役立ちたい」という受講生の言葉に、この事業の意味の大きさを強く感じています。
◆中塚美智子(なかつか・みちこ)大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、1級キャリアコンサルティング技能士。「歯科医療の発展が日本を元気にする」と信じ、日々未来の歯科衛生士、歯科技工士の養成に携わっている。