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大動脈剥離で亡くなられた声優さんの「強さ」に感服

 「町医者の独り言・第25回」

 有名な声優さんが、「大動脈剥離」でお亡くなりなった。報道によると、高速道路の脇にハザードを点滅させた状態で発見されたとか。壮絶な最期だと思いました。

 「大動脈剥離」。正式な病名は大動脈解離と言います。大動脈は、もともと内膜、中膜、外膜の3層の壁から構成されています。血液が流れている内側の内膜に何らかの衝撃で亀裂が入り、内膜が裂けて中膜に血液が流れ込み、血管が裂ける病気です。

 大動脈が裂けてしまうため、激烈な痛みを伴います。場合によっては失神したり、そのまま死に至ってしまうこともあるのです。原因には、高血圧、外傷、先天的に組織がもろい…など挙げられますが、一般的に多いのは高血圧です。

 大動脈が裂ける部位によって、大きく2つに分類されます。一般的に用いられるのは、スタンフォード(Stanford)分類です。A型とB型に分類されます。A型は心臓から出た血液が頭に向かっていく途中の血管で裂けるタイプで、B型は頭の方から足に向かって流れる血管が裂けるタイプです。

 A型の方が心臓から近い部分で血管が裂けるので、裂け始めると血管の裂ける部分が一気に広がり、または、広範囲に血管が裂けたり、裂けた部分が心臓に及ぶと直接死亡することもあるんです。B型は、A型とは違い比較的予後がいい場合が多いのが特徴的です。A型に対しては、一般的には手術が施行され、B型は内科的治療が行われます。

 これからの季節は寒くなってくるので、血圧の高い人は要注意です。塩分摂取をできるだけ控えて、ストレスや疲れをためないように注意しても血圧が低下しない場合は、病院を受診して投薬治療を受けたほうがいいでしょう。

 話をもとに戻しますが、驚愕(きょうがく)すべきは高速道路で運転中に発症したにも関わらず、ほかの人を一切巻き込むことなく、休まれるようにお亡くなりになっていたことです。亡くなられた声優さんは、本当に強くて優しくて、人を思いやる素晴らしい人だったのでしょう。

 われわれ医者は同じ状況の患者さんを見ているので、どれだけ苦しかったかを想像することができます。私が同じ状況だったなら、痛みのために正気を保てず、多くの方を巻き込んでしまって死亡した可能性もあったのではないかとさえ、思うほどです。

 突発的に予期せぬ状態に襲われても、最後まで他人を思いやる強さ、優しさを持ち続けた。すごい人です。つめの垢でも煎じて飲みたい気持ちです。本当に心からご冥福をお祈り致します。

 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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