医師も緊張する大腸カメラ受診…終わったらスッキリ 早期発見&治療の大きな助けに

 「町医者の独り言・第9回」

 近年、食の欧米化とともに大腸がんが増加しており、女性のがん死亡原因の1位が大腸がんになりました。そのため検診などで便潜血を受けられる人も増加しています。大腸がんは比較的悪性度が低いがんと言われています。ですから、早期発見、早期治療で完治する可能性は高いのです。

 大腸の壁は、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜と5層構造になっています。がんは必ず大腸壁の内側の粘膜から発生し、進行とともに深く浸潤していきリンパ節、多臓器転移などをきたすのです。発生の仕方にも、腺腫から次第にがん化するタイプと、いきなりがん化するタイプがあります。腺腫から発生するタイプは、内視鏡的ポリープを切除した際によく認められます。大腸がんでも粘膜内にとどまるがんに転移は認めず、内視鏡的切除で治療は終了です。

 粘膜下層に浸潤するとリンパ節転移は10%前後(浸潤の深さによる)で、内視鏡的切除で終了する場合と、追加で腸管切除とリンパ節郭清を施行する場合に分けられます。筋層以深の浸潤が疑われた場合は、最初から手術になります。近年、腹腔鏡の手術が進歩していて多くの場合、腹腔鏡で行われています。抗がん剤治療も著しく進歩しており、以前は諦めざるをえなかった症例でも完治することもあります。

 さて、早期発見、早期治療の大きな助けとなる大腸カメラですが、世間一般では「大変」というイメージがありますね。当院で検査を受けられた患者さんは多くの場合「楽だった」と言われて帰宅されます。しかし、実際にしてみないと分からないのが現実です。当院では、3日前から軽い食事制限をして当日に下剤を1・8リットル内服していただき、大腸内の便を完全になくしてから検査してもらいます。前処置の仕方は、医院、病院により違いはありますが、できるだけ大腸内を空っぽにして検査に臨んでもらった方が、検査を受ける患者さんの負担は少なくなるので、当院での前処置は他院よりも少し厳しく感じられる人もおられるようです。

 実際の検査時間は、肛門からカメラを挿入して大腸の一番奥(盲腸)に到達するまで当院では5分以内で済むことが多いです。他院ではそれより長くかかることが多いとよく聞きます。もちろん、ケースバイではあるのでカメラを挿入しやすい人なら1分くらいで奥まで到達することもありますし、まれに挿入困難な患者さんなら10分以上かかってしまうこともあります。以前、大病院の看護師さんがうちで検査を受けました。ご自身の病院よりかなり短い時間で、楽に検査が終わったので「本当に最後まで見たのか?」とあらぬ誤解をされたこともあります。もちろん、ちゃんと説明して納得していただきましたが(笑)。

 当院では、胃カメラと同様に鎮静剤を使用して検査を行います。「楽だった」と言ってもらえる要因です。また可及的に切除出来るポリープは日帰りで切除するようにしています。多くの病院では、まず検査をしてポリープが見つかれば、別の日に入院してから切除をします。つまり短期入院です。これでは、患者さんの経済的かつ時間的負担が大きいので、私はできるだけその場で切除するようにしています。もちろん、症状により危険と判断すれば入院後の切除をお勧めすることもあります。

 このように患者さんに大腸カメラや胃カメラを勧めている私ですが、今年2月に初めて大腸カメラを受けて、日帰りでポリープ切除をしてもらいました。大好きなお酒が1週間飲めない辛さはありましたが、しっかり治療して安心した次第です。来年以降も代診をたてて受けようと決めました。大腸ポリープ切除を受けた患者さんには、患部の大きさ、形状、性状や年齢など様々なことを勘案して、次回に大腸カメラを受ける望ましい時期をお伝えしていますが、それが完全に正確な時期なの?と言われてしまうと、正直言って“正解”がないのが実情です。例えばこちらが数年後でいいと思っても、少しでも不安を感じる人は毎年受けられることをお勧めします。

 初めて受けられる患者さんは、不安で一杯だと思います。実は私も検査台に寝たときはかなり緊張しましたが(苦笑)、終わってしまうと受けて良かったと思い、晴れ晴れとした気持ちで帰路につきました。みなさんも臆せずに大腸カメラを受けてください。

 ◆筆者プロフィール

 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。1969年、大阪府生まれ。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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