レンズ越しに見たノムさんの眼光 野村克也氏82歳、輝きは失われず

インタビュー中に鋭い眼光でレンズをにらむ野村克也氏=東京都千代田区の小学館(撮影・出月俊成)
鋭い眼光で球界への提言を語る野村克也氏=東京都千代田区の小学館(撮影・出月俊成)
久しぶりに阪神の帽子をかぶり、エールを送った野村克也氏=東京都千代田区の小学館(撮影・出月俊成)
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 蛇ににらまれたカエル-。まさにそんな心境だ。ジロリとレンズをにらまれた瞬間、凍りついたようにシャッターを押す手が止まった。気持ちを落ち着け、再びシャッターを押し込んだ。

 99年の阪神監督時代に担当カメラマンだった。初めて縦じまのユニホーム姿を披露した時、違和感しか感じなかったことを鮮明に覚えている。そこから空前のノムさんフィーバーが始まった。

 連日1面。ひたすら名将の一挙手一投足を追い回した。ところがこの監督「わしゃシャッター依存症なんじゃ」と言いながら、光り続けるフラッシュにも全く動じない。他社のカメラマンと「俺は20センチの距離で撮った」、「俺は10センチだったぞ」と驚きを交えながら言い合ったものだ。

 そんな中、たまにレンズをジロリとにらむ時があった。超望遠レンズであっても明らかにこちらをジロリ。監督とレンズ越しに目が合う。まさに“眼光”という表現がピッタリ。その瞬間、シャッターを押す手が止まる。「負けてはいけない」。自分を奮い立たせるように必死にシャッターを切り直していた。

 ユニホームを脱いでからはテレビでその姿を見ることが多い。映像でも相手をジロッと見る瞬間がある。でもあの感覚は伝わってこない。今思えばクセのようなものだったのか。

 先日、インタビュー取材で久しぶりに監督を撮影した。順調に撮影を続けた中盤、突然レンズをジロリ。20年近く前の感覚が一気に頭に戻ってきた。映像からは伝わってこなかったあの感覚が。

 撮影後、改めて写真を見直してみた。にらみつけている感じはない。むしろ一瞥(いちべつ)をくれたという程度だ。自分の腕の無さか、ただの気のせいか。

 いや、あの時確かに目の奥が光った。その鋭さは当時と代わらない。御年82歳。その目の輝きはいまだ衰えていない。(デイリースポーツ・出月俊成)

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