【サッカー】なでしこ 「指導が甘い」と電撃退任のニールセン監督 なにが問題だったのか 通訳を介した逆質問
サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」のニルス・ニールセン監督(54)が2日、契約満了に伴い退任した。アジア・カップ優勝からわずか12日後の電撃退任。佐々木則夫女子ナショナルチームダイレクター(ND、67)は「指導が甘い」とし、目標とするW杯優勝へ基準が足りない点を理由に挙げたほか、女子代表初の外国人監督のもとで生じたコミュニケーションの課題にも言及した。記者自身も取材の中で、通訳を介する難しさを実感する場面があった。
昨年12月に実施されたニールセン監督の指揮1年目の総括取材会。約90分にわたる取材の終了後、監督が「協力してほしいことがある」と切り出した。通訳を介し、次のように逆質問された。
「ニルスさんが『なでしこジャパン』と言ったときに、真っ先に頭に浮かんでくるものはなんですか?」
問いに対して順番に答えることになり、近くに座っていた私が最初だった。「ニールセン監督が『なでしこジャパン』と言ったとき…?」。質問の意図を十分に理解できず、とんちんかんな回答をしてしまった。指揮官が困惑した表情を浮かべていたのを覚えている。次の記者が「2011年のW杯優勝」と答えたことでようやく理解し、顔が熱くなった。
ただ、取材後に複数の記者から「自分も最初、何を答えればいいのか分からなかった」と声をかけられた。受け手によって認識にずれが生じたのはなぜか。同じ言葉でも、そこに浮かぶ情景は同じとは限らない。ニールセン監督の原文を確認した。
「What is the first thing you think about when I say “NadesikoJapan”?」。意訳すると「“なでしこジャパン”と聞いて、まず何が思い浮かびますか?」となり、通訳された言葉とは印象が異なっていた。
同取材でニールセン監督は、勝利から遠ざかっていた25年の中盤ごろから「通訳を介してのコミュニケーションが問題だった」と明かしていた。同11月の活動以降は狩野倫久コーチの口から戦術等を選手に落とし込むように変更。その後、成績がV字回復した。佐々木則夫女子NDも退任会見で「どうしても通訳を通さなければならない。語学的に選手の何人かはストレートに分かるが、日本のコーチの方がよりストレートに言葉が伝わる」と理由を説明。優勝したアジア・カップでは、2人の主導権が入れ替わっていたという。
冒頭の問いに、ニールセン監督はこう続けていた。「次のW杯で優勝した後、同じ質問をしたとき、違う場面がみなさんの頭に浮かんでいることを望んでいる」。残念ながら、その未来に同氏の姿はない。言葉の違いを越えて描こうとした景色は、共有されることはなかった。(デイリースポーツ・松田和城)
