【野球】センバツ初導入DH制の効果や今後の展望は? 監督&選手の恩恵と決断難しい場合も
デイリースポーツ記者が独自目線で注目した人物、スポーツなどを掘り下げる新企画「クローズアップ」(随時掲載)。今回は第98回選抜高校野球大会で高校野球に初めて導入された指名打者(DH)制を振り返る。監督、選手たちは何を考え、感じたのか。大会を通した効果や今後への展望に迫った。
新たな時代の幕開けとなった。今年のセンバツから導入されたDH制。出場32校のうち1回戦では26校が使用した。優勝した大阪桐蔭は全5試合で谷渕瑛仁内野手(3年)が「4番・DH」で起用され、打率・316、1本塁打5打点。西谷浩一監督(56)は「ピッチャーが(投球に)集中しやすいのは確か。攻撃もレギュラーが1人増えるので、ありがたい」とDH制の利点を強調した。
他校も攻撃面で有効に活用した。専大松戸の吉田颯人捕手(2年)は、九州国際大付との2回戦でDH1号となる3ランを記録。公式戦初出場で、中学も含めてこれまで本塁打を放ったことはなかったという。「DHがなかったらベンチにも入っていなかったかもしれない」と持丸修一監督(77)。DH制によりニューヒーローが誕生した。
花咲徳栄はDH制に伴い、代走要員2人をベンチ入りさせた。東洋大姫路との1回戦ではその2人を代走に送り、1死満塁からヒットエンドランを成功。遊ゴロで2点をもぎ取って勝利し、岩井隆監督(56)は「DHの恩恵」と語っていた。
各校の投手からは、打席に立たないことによる疲労軽減を感じる声が多く聞かれた。全5試合で626球を投げ、準優勝に貢献した智弁学園・杉本真滉投手(3年)は、「(疲労感が)全然違う」。イニング間には「ベンチに帰って、いったん間や呼吸をおける」と精神を落ち着けることもできたという。
試合だけでなく、大会までの練習にも変化があった。大阪桐蔭・西谷監督は「この春(投手は)一回もバッティングしていない。バント練習もしていない」と明かす。阿南光のエース・小田拓門投手(3年)も「ピッチャーメニューオンリーでやっている」。走り込みを増やして下半身を強化し、球の威力も増したという。「よりピッチャーへの意識が高くなった」と投手としての成長を感じていた。
一方、DH制により選択肢が増え、監督は難しい決断を迫られることもあった。先発投手と指名打者を兼ねる「大谷ルール」の適用は、八戸学院光星・北口晃大投手(3年)が崇徳との1回戦で「投手兼DH」として4番を務めたのみ。「大谷ルール」では降板後、指名打者としては試合に出続けられるが、再登板できないことが懸念として残る。花巻東は智弁学園との1回戦でDH制を使わず、万谷堅心投手(3年)を「5番・投手」で起用。佐々木洋監督(50)も「再登板のこともある」と率直に理由を語った。
山梨学院・吉田洸二監督(56)も難しさを感じた一人だ。投打「二刀流」の主将・菰田陽生投手(3年)が初戦の一塁守備で打者走者と交錯し、左手首を骨折。「ピッチャーが投げられないのはチームにとって一番ダメージ。DHにしておけばよかったというのはある」と後悔を語った。ただ、選手の将来性を考えれば指導者として複雑な気持ちもある。「(菰田は)守備が上手な選手。守備練習をしなくなったら選択肢が狭まるので、(守備)練習はさせながら」と持論を述べた。
今大会の結果を踏まえ、夏の大会ではDH制の使い方も変わってきそうだ。西谷監督は「春はまだ寒くてけがのリスクもある」と投手に打撃練習をさせなかったが、「吉岡(貫介投手・3年)も川本(晴大投手・2年)も打てるので、夏に向けて考える」と語った。夏は暑熱対策を考える必要もあり、DHの起用法がカギを握ることになるかもしれない。(デイリースポーツ・山村菜々子)
