【野球】ミスター赤ヘルからほめられた巨人戦でのあり得ないリード 「打たれたらボロカスたたかれる」元広島の西山秀二さん

 1990年代の広島を正捕手として支え、3球団で20年の現役生活を送った西山秀二さん。勝利に欠かせない司令塔でありながら、その存在は地味で脚光を浴びることも、ほめられることもめったにない。そんな捕手稼業にあって、「自分の中で会心だった」とほくそ笑み、当時の山本浩二監督から絶賛されたリードがある。「普通じゃ、あり得ない」と自ら回想する3球連続してスローカーブを要求したプレーとは。

 ◇       ◇

 「やっぱり、あれは自分の中で会心のリードやと思いますね。忘れもせん。いまだに覚えてますからね」

 20年の現役生活を送った西山さんが、そう語るのは今から25年前、2001年6月4日の巨人戦(東京ドーム)でのプレーだ。

 先制しながら六回に1点のリードを許して迎えた七回。マウンドには先発の長谷川昌幸投手に代わって小林幹英投手が上がった。追加点は何としても阻止しなければならない場面だったが無死一、二塁と走者を出した。打席には2番の清水隆行選手。ここで西山さんは「普通じゃ絶対あり得ない」というサインを出した。

 「ここで清水は絶対に幹英の速い球とフォークという意識できている。絶対、頭にない球と言ったらスローカーブしかない」

 西山さんは打者の意表を突くスローカーブを3球連続して要求した。

 「1球目いったら清水がびっくりして見逃した。2球目にいった時も打ちに来かけたけど見逃した。もう、来ないと思ったんやろね、3球目もスローカーブが来た時に慌ててバットを出して、セカンドゴロに打ち取ったんです」

 続く江藤智選手は右飛。4番の松井秀喜選手を敬遠し、5番清原和博選手を遊ゴロに仕留めて、絶体絶命のピンチを切り抜けた。直後の八回に金本の3ランが飛び出し、広島は5年ぶりという巨人3タテに成功した。1回を無失点で切り抜けた小林投手は2年ぶりの白星を手にした。

 「0点で抑えて3タテ食らわしたんです。スローカーブ3球は自分の中では会心ですよ」。西山さんは胸を張った。

 試合後にチームは次戦が行われる横浜に移動。山本監督、松原誠ヘッドコーチ、野村謙二郎選手と出かけた食事の席で、うれしいことが待ち受けていたという。

 「浩二さんが“いやあ、ジャイアンツ3タテはうれしいな、気分いいな”と言って。“ニシ、ようあんなところでスローカーブ3球投げさせたな、よういった”って言ってくれたんです。そんなこと言ってくれるのはマレですから」

 指揮官からの思いがけない賛辞は、西山さんを高揚させた。

 「あれしかないと思ったんですよ。それができたのは浩二さんが全部、任せてくれてるから。勇気が要りましたよ。打たれたらボロカスたたかれるやろなと思いましたけど、これしか無理やと思っていきましたね。普通じゃ絶対ありえないリードでした」

 縁の下の力持ちで、日の当たらない存在とも言える捕手。「誰も評価してくれない。自分しか分からないんですよ。勇気を持ってサイン出して抑えて帰っても、誰も評価してくれない。ヨシ、今日のあの場面は俺のリードで勝ったんだって自分で喜びをかみしめるんです」

 評価されることが難しく、一人悦に入るしかない捕手稼業。だからこそ、山本監督のねぎらいは西山さんの心にしみた。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 西山秀二(にしやま・しゅうじ)1967年7月7日生まれ。大阪府出身。上宮高から1985年のドラフト4位で南海に入団。87年のシーズン途中で広島にトレード移籍。93年に正捕手となり94、96年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。広島の捕手として初めて規定打席に到達して打率3割をマーク。2005年に巨人に移籍し、その年に引退。プロ在籍20年で通算1216試合、打率・242、50本塁打、36盗塁。巨人、中日でバッテリーコーチを務めた。

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