【野球】簡単にアウトにならなかった阪神・森下翔太の挟殺死 勝利を引き寄せた強者の駆け引き
「JERA CSセ・ファイナルS・第1戦、阪神2-0DeNA」(15日、甲子園球場)
中12日の実戦ブランクがあった中、阪神・森下翔太外野手の走塁にリーグチャンピオンの輝きを見た。
自らのバットで先制打をたたき出した六回1死一塁。佐藤輝が放った中堅前への飛球。二塁ベース前で打球を見上げた。打球の高さ、落下速度、前進する中堅・桑原と打球の距離感。捕れない-と確信し、一気に三塁を陥れた。
さらに評価されるべき走塁は、大山の三ゴロで本塁を狙い、三本間で挟殺死となった場面だ。捕球した三塁・筒香が本塁の捕手・山本に送球。ボールを握った山本が三塁に追い詰める。だが、森下は懸命に逃げ、時間を稼いだ。森下が本塁へ切り返したのを見て、二塁ベース手前にいた佐藤輝は一気にスピードを上げて三塁を狙った。森下はタッチアウトになったが、佐藤輝は三塁を陥れた。
2死一、二塁ではなく、一、三塁の局面を整えた功績は大きい。一、二塁であれば、外野は単打での生還を防ぐために前進守備を敷くが、一、三塁となったことで、DeNAの外野陣は三塁走者ではなく、一塁走者の生還を防ぐことへの意識を高める。小野寺の右前打で2点目を奪った事実。DeNA・東を降板に追い込んだ価値ある挟殺死と言っていいだろう。
森下は「短期決戦はそういうところまでこだわってやっていきたいし、チームとしても次の塁を狙っていこうというところがあるので、そこに自分も乗っかって。(1勝の)アドバンテージを生かすには今日勝つことだった。これで乗っていける。明日も勝ちます」と力強く語った。
五回、先頭で右前打を放った中川に代走・小野寺を告げた藤川監督の采配に驚かされた。1勝のアドバンテージがあるとはいえ、初戦を落とせば1勝1敗になり、2連勝でファーストSを突破してきたDeNAの勢いはさらに増す。この回に得点は奪えなかったが、ペナントレースと短期決戦を「全くの別物」と位置付ける指揮官の決意、意地、腹積もりを示したタクトに映った。
六回は先頭の近本が遊撃内野安打。中野が犠打で送った1死二塁で、近本は一塁けん制では走者にスタート切らせない匠の技を見せていたセ・リーグ最多勝左腕の隙を突き、山本が三塁送球できない完璧な三盗を初球に決めた。そして森下が先制の中前適時打。村上が再三のピンチを無失点で耐え忍んだ力投が報われたシーンでもあった。
均衡したゲームに動きを与えた藤川監督は「チーム全員の力で、タイガースらしいゲームになったと思います。集中力が非常に高いですから、やっぱりタイガースの野球という感じですね」と先勝した安堵感より、あと2勝しなければならないという緊張感を保った言葉選びだった。
最も心配されたのは、ブランクがもたらす初戦黒星により、1勝1敗以上の勢いをDeNAがまとってしまうことだった。日本シリーズ進出をかけた戦いで2勝0敗としたチームの突破率は96・8%。もちろん、まだ気は抜けないが、実戦勘を心配する声は杞憂だったようだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)





