【野球】現役7年間で1軍出場35試合 DeNA・桑原2軍監督が挑むミッションとは「成功すれば選択肢が広がる」
プロ野球界に新風を吹かせようとしている。今季からDeNAのファームを率いる桑原義行2軍監督(42)だ。現役7年間で1軍出場は35試合のみ。指導者としてユニホームを着るのもこれが初。「僕が成功すれば選択肢が広がる」。かつてない指導者像を築くため、挑戦を続けている。
「周りを見渡すと、みなさん名選手だった方ばかり。お会いするとやっぱりオーラがあります」。イースタン・リーグで指揮を執るのは、巨人・桑田2軍監督やヤクルト・池山同監督、日本ハム・稲葉同監督らそうそうたる顔ぶれ。「ファンの方が見る『監督像』というのは、そういった方々なんだと思っています。でも僕、劣等感を持っているわけじゃないですけど、経歴とかじゃなく、現役時代にまったく活躍していない人が監督をやってもこういうチームづくりをしてくれるんだ、みたいなところを見せていけたらと思っています」
胸に秘める使命感を口にする。昨オフ、萩原チーム統括本部長から任命を受けた。「我々がつくりたい世界観を、選手たちにも広げていくことを期待している」。編成トップが望むのは、組織の中核を担う新たなチームビルディング。桑原監督は「監督=指導者が同義であると同時に、少し違うかなと思っていて。現場でのマネジメント、仕組みづくり、いろんな長所を持っている人がいる。僕が成功すれば選択肢が広がる。その先駆けになれたらと思います」。
2011年限りで引退後は、球団職員として総務、野球振興、2軍マネジャーなどを担当。引退翌年の12年は親会社がDeNAになったタイミングだ。本社から来た社員との触れ合いは、野球ひと筋で生きてきた桑原監督にとって、刺激的だった。萩原本部長もその中の1人だった。
人材開発を担う部署では、大手企業に組織づくりのヒントを得ようと飛び込みでメールを送るなど、行動力も桁外れ。その熱量と努力が、球団の描く2軍監督像に合致。今回の抜てきにつながった。
技術指導は担当コーチにほぼ一任している。「僕の場合は、全体を包括的に見る監督者。選手起用、采配はしますが、細かい指導はほとんどしないです。1軍の野球を、2軍で忠実に実行することが求められている」。2軍監督と兼任で「投手コーディネーター」の肩書も持つ。昨年、フィジカル面を数値で扱うハイパフォーマンス部長を務めたことから、投手の登板間隔や起用法、強化計画など集約。野手出身ながら、投手管理を請け負う。
素顔は「結構、ゴリゴリ、アナログです。根っこは根性とか、思いっきりそっちです」と笑うが、最後に姿勢を正した。
「野球は今また大きな盛り上がりを見せていますが野球界の10年、20年、30年…100年先に繋げていくことを考えると、現場をもっと進化させることができれば、違った景色が見える」。固定観念にとらわれない、DeNAらしい柔軟な人事。桑原監督は野球界の常識を覆す発信を続ける。(デイリースポーツ・福岡香奈)
◇桑原 義行(くわはら・よしゆき)1982年6月15日生まれ、42歳。東京都出身。日大豊山高-日大を経て、04年度ドラフト8巡目で横浜(現DeNA)に入団。外野手として7年間プレーし、1軍公式戦は通算35試合出場、45打数14安打、打率・311、1本塁打。唯一のアーチは2009年8月26日の阪神戦(横浜)で岩田から放った代打本塁打。11年限りで現役引退し、球団職員に転身。23年にハイパフォーマンス部長を務め、昨オフに2軍監督兼投手コーディネーターに就任。