【野球】巨人 田中瑛の好投を引き出した甲斐のさりげない行動 徹底して足場をならした姿 MLB唯一の日本人捕手と重なる

 「阪神2-3巨人」(22日、甲子園球場)

 巨人が延長戦&4時間超の死闘を制して連勝。今季初めて阪神にカード勝ち越しを決めた。阿部慎之助監督が勝因として挙げたのが八回無死満塁から登板した田中瑛が無失点で切り抜けた場面だった。

 「相手からしたら脅威だと思う。ああいう素晴らしいボールがあるんであそこで出してる。よく踏ん張ってくれたな」と右腕へ賛辞を贈った指揮官。その好投を女房役として支えた甲斐の行動が実に興味深かった。

 田中瑛が森下に投じた3球目、内角シュートでバットをへし折ると、交換へ向かう間に左打席の足跡を丁寧に足でならした。以降も時間を見つけては足元をならす。森下を併殺に仕留め、佐藤輝は申告敬遠で歩かせた。なおも2死満塁。大山にカウント0-1となった場面で田中瑛が間を嫌ってプレートを外した際も、徹底して足場をならしていた。

 この姿を見ていて思い出したのが日本人捕手で初めてMLBの舞台に立った城島健司氏(現ソフトバンクCBO)の姿勢。阪神での現役時代、時間を見つけては同じように打席の足場を整えていた。なぜか?その理由を聞くと「捕手の仕事だからね。もし、その穴に投げたボールが当たって暴投になってしまったら投手に申し訳ないから」と教えてもらった。

 打者は打席で自分の足場を作る。最大限に力を引き出すために穴を掘り、下半身を固める。たまたまそこにワンバウンドが来れば軌道が大きく変わり、ブロックできずに暴投となってしまう。

 そのため、捕手は足場をならす作業を繰り返す。「せっかく埋めたのに、また次の打者がぼっこい(博多弁で深くの意味)掘っていく!もうその繰り返しよ」と苦笑いを浮かべていた城島氏。1点を防ぐための準備を徹底する。それがプロの捕手としての矜恃だった。

 八回の場面、甲斐は何度も何度も足場をならした。絶対に1点もやらないという強い意志がその行動から伝わってきた。四死球も許されない中で森下には全球インサイドのシュートで勝負。そして大山にはシュートでカウントを作り、意識を植え付けた上で初めて要求した外角スライダーで空振り三振に仕留めた。

 最後の1球、リードをかわす場面が中継で映し出されると、マスク越しに優しい表情を向ける甲斐がいた。ワンバウンドになっても絶対に止める-。田中瑛もしっかりと腕を振り切ってアウトローのボールゾーンにスライダーを投げ込んだ。鮮やかにピンチを脱出すると右腕は吠えた。

 甲斐にとっても会心のリードだったかもしれないが、感情を表に出すことはなかった。そして延長十一回、2死満塁で代打・梅野を二ゴロに仕留めて勝利に導くと、ようやく笑みを浮かべてマルティネスをたたえる甲斐がいた。

 現在のプロ野球界を代表するキャッチャー。わずかなリスクをも排除し、準備を徹底する。そして投手のベストパフォーマンスを引き出す。その信念を垣間見たシーンだった。(デイリースポーツ・重松健三)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス