【スポーツ】早田ひな なぜ左手首痛抱えても卓球全日本3連覇できたのか 2つの理由「サボテンは1カ月に1、2回、水をやればいい」
26日まで行われた卓球全日本選手権シングルスの女子は、パリ五輪銅メダリストの早田ひな(24)=日本生命=が、決勝で張本美和(16)=木下グループ=にストレート勝ちし、2014~16年の石川佳純以来の3連覇を成し遂げた。パリ五輪で負った左手首のけがを抱えての出場。それでも、圧倒的な力を見せつけられたのには2つの理由があった。
2016年の石川以来となる3連覇を達成した早田。左手首と向き合いながらの全6試合だったが、決勝では張本美をストレートで退けた。けがを背負いながらも、圧倒的な強さを見せつけられたのは『諦め』と『うまさ』だった。
パリ五輪後、復帰戦となった昨年11月のWTTファイナルを含む3大会に出場したが、わずか1勝にとどまった。けがと付き合いながらの卓球では「毎日感覚が変わってしまう。昨日できていたことが今日できなくなる」と悩みは募った。
戦い続けないといけない中で必要だったのは『諦め』。「諦めるところは諦める。できないことはできない」。前向きな意味での『諦め』として、練習面での取捨選択の例としてサボテンの育成方法を挙げた。
「サボテンは1カ月に1、2回、水をやればいい。それで勝手に成長してくれて、その間に他の花を咲かせられるように頑張っている」
現在の練習時間は、パリ五輪前から1、2時間減らした3時間半程度。「放置するところは放置して、試合をすることで勝手に感覚が戻る。重要なところだけピンポイントで練習する」と、“サボテン式練習法”で、今できることにフォーカスしている。
減らした分の練習時間は、トレーニングや戦術の勉強に充てているといい、『うまさ』の“花”を咲かせる。全日本選手権では大会終盤から、バックハンドで横回転をかける『チキータ』も繰り出したが、ケガの影響でバックハンドでのショットやラリーには不安があるため『うまさ』は必要不可欠。「回数をこなせない分、どこで使うかが勝負」。試合中に、瞬時に頭で判断する力をつけてきた。
決勝を終え「シーズン1がパリ五輪までの早田ひな。ここからがシーズン2の始まり」と話した。14歳からの10年間指導を受けた石田大輔コーチに基礎をたたき込んでもらった期間が、早田の言う「シーズン1」。「いろんな方の考え方を聞いて、いいものを取り入れる。さらに飛び立つためのシーズン2」がここから始まる。
次の大きな舞台は5月にカタール・ドーハで開催される世界選手権個人戦だ。「腕の回復が重要にはなると思うけど、今回みたいな『うまさ』を出した試合ができれば」。2023年大会のシングルスでは銅メダル。「前回のメダルの色より上にいきたい」と、金メダルで世界の頂点につく。(デイリースポーツ・南香穂)
◆早田ひな(はやた・ひな)2000年7月7日、北九州市出身。4歳で卓球を始め、希望が丘高1年のときにインターハイで優勝した。全日本選手権は20年にシングルスで初優勝し、23年にシングルス、ダブルス、混合ダブルスの3冠に輝いた。同年の世界選手権はシングルスで銅、張本智和との混合ダブルスは銀メダル。パリ五輪ではシングルスで銅メダル、団体では銀メダルを獲得した。167センチ。