【スポーツ】桃田賢斗、かつてのビッグマウス封印も人生そのものが“雄弁”だった世界王者 五輪出場は1回…記録より記憶に残るスーパースター

 バドミントン男子シングルス元世界ランク1位で、世界選手権を2度制した桃田賢斗(29)=NTT東日本=が18日、東京都内で記者会見を開き、トマス杯(27日開幕・成都)を最後に日本代表から引退することを表明した。今夏のパリ五輪出場を逃していた。メダルが期待された16年リオデジャネイロ五輪は違法賭博問題で棒に振り、結果的に1次リーグ敗退で終わった21年夏の東京大会が唯一の五輪出場となったが、数々の金字塔を打ち立てた功績は色あせない。

 茶色い短髪、小麦色に焼けた肌に、ど派手なアクセサリー。左腕から華やかに放つジャンピングスマッシュに加え、人を食ったようにネット前に落とすヘアピンショットで意表を突く。手にした高額賞金で「派手に遊びたい」とうそぶいたり、あるベテラン選手には「パフォーマンスが落ちた」と辛らつな言葉を発するなど、会見ではビッグマウスもたたいた。歯に衣着せぬ物言いに驚かされることもあったが、国内ではまだまだマイナーな競技を盛り上げようと、本音を偽らない姿勢はどこか小気味よかった。記者が初めて取材した20歳の桃田は色気にあふれ、とても魅力的で、こちらの拙い筆も自然と踊った。

 直後に発覚した違法賭博問題で最初の“全盛期”を棒に振った。心が折れてもおかしくなかったが、ゼロから再出発し、どん底から世界一に上りつめた胆力は本物だった。かつての派手な格好や奔放な言動は鳴りをひそめたものの、度重なる逆境を乗り越える人生そのものが“雄弁”で、多くを語らずともカリスマ性はむしろ増した。2月の試合にはチョコを持った女性ファンが多く訪れ、バドミントン大国のインドネシアでは一挙手一投足に黄色い歓声が飛んだ。

 以前、同じ1994年生まれの大谷翔平の存在について聞いてみたことがあるが、「同級生だからというより、一ファンとして純粋にすごいな~と思って見ています」と、決して張り合うこともなく野球少年のように憧れを明かしたのが印象的だった。ただ、バドミントンの世界では大谷に勝るとも劣らない絶対的な存在だったと言える。五輪の舞台に1度しか立てなかったのは数奇としか言いようがないが、記録以上に記憶に残るスーパースターだった。(デイリースポーツ・藤川資野)

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