【野球】阪神・村上が分岐点を制した攻めの姿勢 菊池勝負で間違えなかった6球 攻撃への流れを生み、完封リレーへ導く

 5回、菊池を空振り三振に斬り、声を上げる村上(撮影・中田匡峻)
 7回、村上が三者凡退に抑えるとベンチで笑顔を見せる岡田監督(撮影・田中太一)
 お立ち台で答えに悩む村上(左)と笑顔の近本(撮影・中田匡峻)
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 「阪神1-0広島」(9日、甲子園球場)

 間違いなく勝負の分岐点だった。0-0の五回、2死から坂倉が左翼線を破る二塁打で出塁。打席には8番・菊池を迎えた。相手先発は床田で間違いなく1点勝負の展開。勝負を避けるのも手か-。そう感じる場面だったが、バッテリーの選択は違った。

 村上は「(マウンドに内野陣が)集まったときに後ろピッチャーだけど、バッターでいこうっていう話になったので。自分も勝負のつもりで投げた」。初球、147キロのストレートでカウントを奪う。2球目は低めのフォークを完璧に振らせた。あっさりと2ストライクと追い込み、ここから昨季のMVP右腕が伏線を張り巡らせる。

 3球目、簡単には勝負に行かず、外のボールゾーンにストレートを投げ込んだ。4球目も裏を欠いてのストレート。ボールは低めに外れたが、絶対に高めに投げないという意志を感じさせる1球だった。5球目は打者の頭にないようなスローカーブを見せる。これも外れて3-2になったが、ボールカウントを目いっぱい使ってどの球種でも投げられるように選択肢を広げた。

 そして6球目、ワンバウンドの132キロフォークを振らせて空振り三振。鮮やかにピンチを脱した。雄たけびを上げ、悠然とマウンドを降りる村上。絶対に間違わなかったコントロール、そしてカウントを目いっぱい使う投球術。これぞプロの勝負と言えるような内容が、味方打線の援護、そして完封リレーでの勝利へつながる。

 直後に木浪の安打が飛び出し、自らも無死一塁の状況で打席に立つと、1球で送りバントを決めた。そして近本がタイムリー。先制点を奪うと、村上はギアを上げた。六回、七回と圧巻の投球で広島打線をねじ伏せマウンドを降りた。

 五回の場面に話を戻すが、仮に菊池を歩かせて投手に打順を回せばグラウンド整備明けの六回は1番から打順が始まる。菊池を打ち取れば9番の床田から。プロ野球でも高校野球でも甲子園のグラウンド整備明けは他球場と比べて時間を要すこともあり、ゲームの流れが変わりやすいと言われる。

 そこで1番から始まる打順か、9番から始まる打順かで大きく違う。村上は智弁学園時代、センバツで全5試合を投げ抜き頂点に立った。その時、アマチュア野球担当として取材していたが、ゲームの流れを読む能力、そして抜群のコントロールは秀でていたように思う。

 初めて村上を見たのは2年生時の春。智弁学園のグラウンドで行われた練習試合を見た際、小坂監督が「いいピッチャーでしょ?」と言っていたのを覚えている。他のドラフト候補と比較しても体が大きいわけではない。強いボールがあるわけでもない。だが「すごくコンパクトに投げられる子」と小坂監督が評したように、真後ろから見るとフォームとの緩急差に打者が戸惑っていた。

 力感がない状態から突然出てくるキレのあるボール。そして2年夏の奈良大会、2年秋の近畿大会での大阪桐蔭戦と敗れた経験を糧に変えた。センバツでは決して状態が良いとは言えない中、「バッテリーが逃げたら終わり」と右打者の内角に寸分の狂い無く投げ込んだ。コントロールを間違えない投手。その片りんは高校時代からあったように思う。

 この日、菊池に対して見せた6球は村上の真価を証明するような投球だった-。「低めに丁寧に投げられたのが良かったかなと思います」。価値ある1勝を攻めの姿勢で呼び込んだ。(デイリースポーツ・重松健三)

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