【野球】阪神・大山とヤクルト・西川の清々しいワンシーン 一塁であわや大惨事の激突も 互いが互いを気遣う 神宮が拍手に包まれる

 「ヤクルト6-7阪神」(5日、神宮球場)

 神宮が騒然となるアクシデントがあった。それでも激突した2人が見せた行動は「これぞスポーツマンシップ」という清々しいものだった。阪神・大山悠輔内野手がヤクルト・西川遥輝外野手に声をかけ合い、お互いがお互いを気遣う。激闘の中で垣間見えた瞬間にスタンドからは大きな拍手が降り注いだ。

 球場が悲鳴とどよめきに包まれたのは場面は五回だった。西川が一、二塁間へ放った打球を中野が懸命にグラブを伸ばして捕球。そのまま一回転して一塁へ送球したが、ボールがそれ、走り込んできた西川と大山が激しく衝突する形になった。

 全速力で大山にぶつかった西川は起き上がれず。背後からぶつかられたような形になった大山は足を押さえながら仰向けに倒れ、苦悶の表情を浮かべた。すぐさま両チームのベンチからトレーナーや首脳陣が駆けつける。球場スタッフは2台の担架をグラウンドに持ち込み、緊迫した状態となった。

 スタンドからは両選手へ「頑張れ」コールがわき起こる。阪神・坂本らは西川のもとへ駆け寄り、心配そうに声をかけた。それでも2人が立ち上がってプレー続行の意思を見せると、スタンドから割れんばかりの拍手が降り注いだ。そして大山が西川に何か声をかけると、西川も笑みを浮かべて大山の背中をポンとたたいた。

 さらにプレー再開までにあった時間で、今度は西川から大山に言葉をかけ、両手を体の前に置いて力を込める“マッスルポーズ”を繰り出すシーンもあった。西川は「まあでも出れているんで。あれは別に」と言った。大山も「きょうはそれじゃなくて」と多くを語らなかった。

 真剣勝負の中で起こったアクシデントとは言え、一歩間違えば選手生命の危機に陥るような激突シーン。阪神・大山は開幕前に下半身の張りで別メニュー調整を行っていた。対する西川も昨オフに楽天を戦力外となり、ヤクルトに活躍の場を求めた。復活を目指すシーズンの序盤だけに、色んな思いがあっても不思議ではない。

 それでも激突の直後に笑ってお互いを気遣ったシーン。清清しいまでのスポーツマンシップを感じさせた。昨季から一塁を守る大山は味方の投手が死球を与えた場合、必ず一塁へ来た相手選手に帽子を取って謝る姿勢を見せている。そんな行動を積み重ねてきたからこそ、この日もすぐに西川へ頭を下げたのだろう。

 昨季終盤に近本の死球を巡って険悪なムードになったこともあった両チーム。だが年が明け、最初に迎えた神宮でのゲームで大山と西川が見せたワンシーンは大きかったように思う。スタンドのファンがチームの垣根を越えて送った拍手。球場全体を包んだ温かさが感動的だった。

 試合は延長十回に阪神・佐藤輝が決勝弾を放った。1点差の白熱したゲームにファンが純粋にのめり込むことができたのも、大山と西川の姿勢があったからかもしれない-。そう思わせるほど、2人の対応が心に残った。(デイリースポーツ取材班)

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