【野球】巨人・菅野の「30センチ勇気」 プレート踏み位置を大胆移動の理由 「スライダーを効果的に使うため」

 復活を期す巨人・菅野智之投手(34)が「30センチの勇気」でシーズンに臨む。実績、経験十分のベテラン右腕がプレートを踏む位置を、従来の一塁側から三塁側に変更。登板前のルーティンも「遠投廃止」、「ブルペンの球数を減らす」など変化を恐れない。昨季4勝の右腕が完全復活すれば、チームにとっては最大の“補強”になる。

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 数字にすれば、わずか「30センチ」だ。それでもミリ単位の制球で勝負するプロ野球では、フォームを変えるほどの勇気が必要でもある。菅野が今キャンプでプレートの踏み位置を一塁側から三塁側に変えた。昨季プロワーストの4勝に終わった右腕。もう一度、自分の特徴を見つめ直した。

 「データを見返してみると、昨年は右打者の被打率が良くなかった。あとは、スライダーを効果的に使うためですね」

 一般的に右投手は本格派が三塁側を使い、シュート系の球種を持つ投手が一塁側を踏む。打者の右左で投げ分ける投手もいる。ただ、近年はメジャーを中心に“動く速球”のカットボール、ツーシーム全盛の時代になり、右投手が一塁、左投手が三塁というのが主流。今回、菅野の変化は原点回帰とも言える決断だ。

 菅野が振り返ったように、昨季は左打者の被打率が・197だったのに対し、右は・285。シーズン後には正捕手の大城から指摘を受けた。「もっとスライダーが曲がったら、投球が楽になりますねと言われたんですよね。確かに昨年は勝負どころで選択肢になかった」。この一言でかつての決め球とともに、復活ロードを歩む覚悟を固めた。

 三塁側を踏むと、打者は「背中から球がくる」感覚。右打者の外角、左打者の内角に角度が付く。ただその分、体に負荷が掛かる。オフは例年の倍以上に増やした走り込みなど、基礎から体作りを見つめ直した。ハワイの自主トレは球の質をテーマに「上から球をつぶす、たたくような感覚」を磨いた。大城も「目いっぱいに寄ってますよね。より角度が付いている感じがします。今年の変化は球を受けていても感じますね」と証言する。

 変化はプレート位置だけではない。登板日のルーティンも変えた。長年、直前に100メートル近い遠投を取り入れていたが「力む原因になっているかな、と。遠投とマウンドで投げる(体の)傾きは違う」と分析。24日のオープン戦初登板、広島戦では50~60メートルをライナーで投げる練習法に切り替え、試合前ブルペンの球数も減らした。全ての変化は、体の状態に不安がない裏返しでもある。

 「変わることに対して抵抗はないです。なんだろう…いい時はやっぱり変えやすいんです。悪くなってから変えるってなかなか難しい。だからこそ今いろんなことに挑戦して、スタイルを確立していかないといけない」

 新たな調整を試す心の余裕が順調な証しだ。同戦では1回を無安打無失点投球。菊池からスライダーで空振りを奪うなど、田中、シャイナーら広島の主力を完全に封じた。「体も心も、すごく充実してます。次の実戦も楽しみに、投げ終えられましたので」。表情にも自信が見える。飽くなき向上心、探究心が礎だ。阿部監督も「例年にないくらい飛ばしている。意気に感じます」と覚悟を受け取っている。変化は進化。「30センチの勇気」が菅野の復活を支える。(デイリースポーツ巨人担当・田中政行)

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