【芸能】君も「相棒」を書いてみないか!? 東映が脚本家の採用募集中(前編)
数多くの映画やテレビドラマ、配信作品を制作している大手映画会社「東映」が現在、芸術職・脚本家を募集中だ。合格すれば3年間の契約社員として採用され、脚本家デビューを目指すことになる。2021年の募集に合格し、昨年、大ヒットドラマシリーズ「相棒」で地上波ドラマデビューを飾った、テレビ企画制作部の光益義幸さん(35)がデビューまでの舞台裏を明かす、その前編。(デイリースポーツ・藤澤浩之)
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光益さんが脚本家を目指したのは30歳を過ぎてから。前職はエンジニアだが、映画やドラマが好きで、脚本家の養成所であるシナリオ・センターで学び始め、WOWOWのコンクールで受賞したことで本格的に脚本家を目指したという。
試験はエントリー・書類選考、1次選考(実技試験・リモート面接)、最終選考(面接)と進む。光益さんが採用された21年はエントリー1239人に対し合格は3人と、超難関だった。
光益さんの時はあらかじめ、与えられたテーマに即したショートストーリーのプロットを提出した。リモート面接でプロットの直しが入り、それを受けて実際に脚本の形にして提出し、クリアすると最終選考となる。
脚本家の入り口といえばシナリオコンクールが一般的で、テレビ各局も実施しているが、光益さんによれば東映は「ちゃんと直しに対応できるか」を見るという。
「プロの現場に入ったらそこを一番問われます。1本面白いものを書けるかというよりは、プロデューサーとやりとりできるかというところを重視する。実際、現場に入ってそれは痛感しています。そういう能力を見ているというのが選考の時点であって。そういうことをやっている組織を他ではあまり見かけたことがなかったので、これは面白いなと選考の途中から思っていて。実際にプロの現場で行われることの縮小版みたいなものを、選考で見てくれる」
光益さんがデビューしたのは22年。かなり早いように思えるが「(これまでに採用された)皆さん、(契約社員として)在籍中にデビューされている印象なので、芸術職はそこをちゃんとサポートしてもらえるものなのかなと(思う)」と、デビューへのサポートは手厚いようだ。実際に同期2人も既に脚本家デビューしている。
「それ(指導が実践向きであること)はすごく感じますね。研修みたいな形で学ぶ時間はあるんですけど、最初の3カ月ぐらいで、けっこうすぐに『相棒』だったり、いろんなテレビドラマの現場のプロデューサーの方と、実際に放送されるためのプロットを成立させようという感じで。最初は成立するまでがなかなかハードルが高いんですけど、それを何とか成立させようという感じで、プロデューサーさんが見てくれるっていう形ですね」
光益さんは昨年4月に配信開始となったひかりTVドラマ「グッドモーニング、眠れる獅子」で脚本家デビュー。続いて「相棒」で地上波ドラマデビューを飾った。
「『相棒』のプロットは1年目から出し続けていて、1年目は成立できなかった。放送に耐え得るものを出せたらデビューっていう形なので、(東映に)入った後もずっと選考が行われているというか、いいものを書きさえすればすぐにでもデビューできるということだと思います」
デビューが決まった時の心境を、光益さんはこう振り返る。
「まずはちょっとホッとするというか。『グッドモーニング-』は企画として成立するだろうという形で動いていたので、あとは自分がどれだけプロデューサーが思っているクオリティーを出せるか、ついていくのに必死だったので、やったーっ!ていうよりは、完成した時は何とか1本東映で自分の作品を残せたっていう安堵(あんど)が強かった」
また、「相棒」が成立した時の喜びは「めちゃくちゃうれしかった。地上波となると見てくれる人も増えますし、『相棒』を書きましたって、自分の名刺にも強い顔として乗せられるし」と、また格別だったようだ。
「(両親は)はしゃいでいましたね。周りに言いふらしまくっているという噂が地元で聞こえてきました。『相棒』は普段ドラマを見ない人でも、ああ相棒ねってなる作品なので、そういう意味では親をいったん安心させられて良かったかな」と、笑顔で家族の反応を明かした。(後編に続く)



