【スポーツ】貴景勝が挑む超難関綱とり 昇進3場所前全休で成功例なし 2場所前11勝以下も平成以降ゼロ
12日に初日を迎える大相撲九州場所。注目されるのが、大関貴景勝(常盤山)の綱とりだろう。4度目の優勝を飾った秋場所の11勝4敗は、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降4度目の最少勝利V。綱とり機運が醸成されているとはいえず、昇進を預かる審判部の佐渡ケ嶽部長(元関脇琴ノ若)も10日の取組編成会議後「最後まで見てみないとわからない。今、どうのこうの(言えること)はない」と慎重な言いまわしに終始した。
過去を見ても、今場所での綱とり成就は相当な難関だ。貴景勝は両膝のケガで名古屋場所を全休。昭和以降に誕生した横綱42人のうち、昇進3場所前に全休して綱とりに成功した例はない。
また、1場所15日制が定着してから昇進2場所前に11勝以下の成績で横綱となったのは、千代の山、吉葉山、朝潮、柏戸、玉の海の5人。それも70年の玉の海(10勝5敗↓13勝2敗同点)が最後で、平成以降ではゼロとなっている。
58年1月に制定された横綱審議委員会(横審)の内規では、大関で2場所連続優勝した力士を横綱推薦の原則とし、それに準ずる成績を挙げた力士を推薦する場合は出席委員3分の2以上の決議が必要。貴景勝が九州場所を制すれば「原則」はクリアすることになる。
横審の山内昌之委員長は、秋場所後に「優勝したことはさんぜんと輝く結果」と貴景勝を評価。そのうえで「来場所は多くの前提や条件が満たされた場合は、綱とりがかかる場所ではないか。姿勢や星取りの結果を含めて判断されることではないかと思う」とした。
求められるのは、誰もが納得する結果と内容。15戦全勝や14勝1敗のハイレベルな優勝が、越えるべきハードルといえそうだ。
貴景勝も「最後の番付(横綱)は自分が決めることじゃない。今場所も優勝して、周りに評価していただけるように頑張る」と、先月末に話していた。今週に入って違和感を訴えているという首の状態は不安材料だが、佐渡ケ嶽審判部長が「とにかく貴景勝らしい相撲をとってくれれば」と期待する自慢の突き押しで白星を重ねていければ、角界の頂点が見えてくる。(デイリースポーツ・藤田昌央)
☆平成以降に誕生した横綱の昇進前3場所の成績
・旭富士(8勝7敗、14勝1敗V、14勝1敗V)
・曙(9勝6敗、14勝1敗V、13勝2敗V)
・貴乃花(11勝4敗、15戦全勝V、15戦全勝V)
・若乃花(10勝5敗、14勝1敗V、12勝3敗V)
・武蔵丸(8勝7敗、13勝2敗V、13勝2敗V)
・朝青龍(10勝5敗、14勝1敗V、14勝1敗V)
・白鵬(10勝5敗、13勝2敗V、15戦全勝V)
・日馬富士(8勝7敗、15戦全勝V、15戦全勝V)
・鶴竜(9勝6敗、14勝1敗同点、14勝1敗V)
・稀勢の里(10勝5敗、12勝3敗、14勝1敗V)
・照ノ富士(12勝3敗V、12勝3敗V、14勝1敗)