【野球】広島・新井監督の人柄がにじむワンシーン ベンチ前で甲子園に深々と一礼 感謝を忘れず選手には「ありがとうって」

 深々と頭を下げ、球場をあとにする新井監督(撮影・田中太一)
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 「JERA CSセ・ファイナルS・第3戦、阪神タイガース4-2広島東洋カープ」(20日、甲子園球場)

 監督になっても変わってないんだなと感じさせるワンシーンだった。3連敗でファイナルS敗退となった広島・新井貴浩監督。スタンドのファンへあいさつを終えた後、三塁ベンチから引き揚げる際、甲子園のグラウンドへ深々と頭を下げた。

 選手として阪神に在籍していた時に何度も見た光景。試合終了後に引き揚げる際、必ず一塁ベンチの最前列から帽子を取って一礼することを忘れなかった。野球ができることに感謝を忘れない、礼儀正しい人柄。そんな印象を現役時代から感じていたが、チームを率いる立場になってもどこか懐かしく感じた。

 就任1年目のシーズン。決して下馬評は高くなかった。それでもチームを「家族」と称し、現有戦力の力を最大限に引き出した。広島、阪神のコーチ時代に新井監督を指導したデイリースポーツ評論家・岡義朗氏は「選手の気持ちを上げるのがうまい」と就任1年目の采配ぶりを高評価。印象に残っているのは8月16日、マツダスタジアムで行われた広島-阪神戦。負ければ自力V消滅という中で、新井監督はビハインドの展開でも島内、矢崎を投入。さらに捕手の坂倉を初めて一塁スタメン起用するなどなりふり構わず勝ちに行く姿勢を示した。

 結果的に敗れて阪神の優勝マジックが点灯したが、広島の3連覇時代、阪神担当としてイヤというほどカープの強さを味わった。マツダスタジアムではとにかくあきらめない、突き放しても突き放しても追いついてくる、記者席から見ていても恐怖を感じるほどだった。リーグ3連覇から5年、チームの思いを一つにし、ファンも一体となって束になってかかってくる強いカープの野球。それを思い起こさせるようなゲームだった。

 阪神が首位を快走していく中でも懸命に食らいついてきた広島。最後は力尽きてしまったが、投手陣など阪神との戦力差があり、発展途上のチーム状況の中、最大限のパフォーマンスを出し切ったのではないか-。シーズン、そしてCSの戦い振りを見ながらそう感じさせた。

 新井監督は「みんなよく、本当に最後の最後までよく頑張ってくれた」と語り、「みんな、あきらめず最後まで戦って3試合とも、いい試合だったと思うと同時に、やっぱりタイガース強いなというふうにも感じました」と自チームにも相手の阪神にも敬意を払った。その上で「やっぱりね、チームを預かる者として勝てなかったというところで悔いはありますよね」と率直な胸の内を明かした。

 ただチームを5年ぶりのCS進出=Aクラスへと導き、強いカープの復活へ、第一歩を印象づけたのは間違いない。「本当に選手の頑張りというのは戦っている中ですごく感じたので、本当に選手全員には、ありがとうって言いたいですよね。開幕前はすごく評価が低いチームだったけど、それを選手が『なにくそ』と思って頑張ってくれて。優勝はできなかったけど、2位でCSをできたということは本当みんながよく頑張ってくれたと思います。また、この経験を来年につなげていかないといけないなと思ってます」と新井監督。来年はどんなチームを作ってくるのか-。そう期待を抱かせるような新井監督就任1年目のシーズンだった。(デイリースポーツ・重松健三)

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