【野球】2軍に降格した“落ちトラ”の反攻が近本不在となったチームの浮沈を握る 阪神OBが解説
球宴ブレークまで残り12試合という段階で、超ド級のバッドニュースが飛び込んできた。2日の巨人戦で死球を受けた阪神・近本光司外野手が右肋骨を骨折していることが判明。4日の広島戦前に球団から発表があり、出場選手登録を抹消された。
岡田監督は「昨日で骨折は分かっとったけどな。でも、まだちょっと動けるみたいで、もう一回様子見いと言うたんやけどなあ、今日はもうアカンかったなあ」と長期離脱が避けられない見通しであることを明かし、当初は7日のヤクルト戦(甲子園)から1軍再昇格させる予定だった佐藤輝明内野手を5日の広島戦から1軍に合流させることを明言した。
「明日から来るよ。そんなんお前、全部こっちでやってるんやから。明日来たら分かるよ。試合前から来るの分かってるから、張り切って3本打ったんやんか」と、佐藤輝が同日のウエスタン・ソフトバンク戦で降格後初本塁打を含む3安打4打点とハッスルした背景を冗談交じりに話した。
指揮官は開幕前、佐藤輝を三塁で固定する方針を打ち出していた。だが、9本塁打、38打点ながら、打率・229と沈み、6月の月間成績が打率・179、1本塁打、8打点と不振から抜け出せなかったことから、横浜遠征中の6月25日に出場選手登録を抹消した。
抹消時には平田ヘッドコーチから「プレー以外のところも見られているぞ」と告げられている。打席結果だけでなく、凡退時に全力疾走できていなかった点、ミスを犯した際の立ち居振る舞いなども2軍降格の判断材料になっていたと推測される。
降格中の佐藤輝を見守ってきた和田2軍監督は「打つだけじゃなくて、守備も走塁もしっかりやろうという意識は見て取れる」と心を入れ替え、試合にも練習にも臨んできたことを認めた。佐藤輝は再昇格に際し、「上でも下でもやることは一緒なので。それを続けていきたいですね」と決意を新たにした。
阪神OBの中田良弘氏は「近本が骨折となって、佐藤輝の再昇格が早まったところはあるんだろうけどね」としながらも、「結果を求められる立場だろうけど、一番大事なのは、岡田監督や首脳陣に『おっ、変わったな』と思わせることだと思うよ」と指摘した。
「結果が出る、出ないは、運、不運に左右されるところもあるけど、一生懸命全力を尽くすっていうことに関しては、運は関係ないからね。佐藤輝の今後を考えると、目先の結果も大切だし、欲しいところだけど、この先長く続いていくプロ野球人生で、今回の2軍落ちが分岐点になったなと、後に振り返ることができるかが大事だと思う」と解説した。
また、9日のヤクルト戦では青柳が復帰登板に臨む予定。2年連続最多勝で、昨年は投手3冠に輝いたエース右腕。だが、今季は制球難に苦しんでいた入団当初の姿がフラッシュバックするように細かなボールの出し入れに苦しみ、7試合の登板で2勝3敗、防御率5・63。初回5失点した5月19日の広島戦の翌日に2軍降格となっていた。
1カ月半に及んだ2軍降格中には5試合に登板して2勝1敗、防御率2・25と復調の兆しを見せ始め、5回2安打無失点に抑えた2日のウエスタン・オリックス戦は、岡田監督が東京ドームでの巨人戦後に居残って映像で確認した。鳴尾浜で最終調整を続けている青柳は「チームは僕が抜けてからずっと好調だった。あまり貢献できていないので頑張りたい」と汚名返上に意気込んでいる。
中田氏は青柳の復帰登板について「立ち上がりがカギになるだろうね。今年は初回に失点することが多かったからね」と、試合の入りを最重要ポイントに挙げた。続けて「青柳にとってはただの1試合じゃない。この試合で打たれる、乱れるってことになると、本当に自信を失ってしまうかもしれないっていうぐらい、大きな意味を持つ試合になると思うから、自分も、そしてベンチも安心させる結果と内容を初戦から出すことが必要になってくると思う」と、佐藤輝とは求められるものが異なるとの見解を示した。
2軍降格という憂き目を味わったエースと主砲の“落ちトラ”2人が戻ってくる。汗を垂らし、息を切らし、いま一度野球と向き合った日々を無駄にすることはできない。晴れやかなカムバックを待っている。(デイリースポーツ・鈴木健一)




