【野球】なぜ阪神はミスを連発しながら逆転勝ちできたのか 首位快走を支えるリーグトップのデータ 絶体絶命での強さ

 敗北寸前まで追い込まれた阪神が、驚異の粘り腰で逆転勝ちを収めた。24日のヤクルト戦。1点を追った九回2死。敗戦まであと1死の状態からノイジーの三塁打と大山の四球で一、三塁とすると、佐藤輝が右翼線に逆転の2点適時二塁打。今季3度目の4連勝で貯金を今季最多の13とし、巨人に敗れた2位・DeNAとのゲーム差を今季最大の3とした。

 手堅い野球で勝利を積み上げてきた今季の岡田阪神らしからぬ試合内容だった。

 先制点を許した三回1死三塁。西勇が投手・吉村に初球を右翼に運ばれた。不用意に映った甘い球。飛球をグラブに収めた森下のカットマン・大山への送球が大きく左にそれ、本塁クロスプレーに持ち込めなかった。春季キャンプから、外野手は中継プレーで内野手に正確に送球することを重要テーマに掲げており、ここまでラインを外れた送球は初めてだったのではないか。

 四回2死一塁の場面では、一塁走者のサンタナがスタートを切ったことを梅野が西勇にアピールした際、左足を上げた西勇が投球動作を途中で止めてしまうボークを犯し、塩見の中前打で一時同点に追いつかれた。

 五回1死一塁では、投手・山本の小飛球となった送りバントにミットを伸ばした梅野が捕球できず、拾い直して急いだ遊撃・木浪への送球がショートバウンドとなってピンチが拡大した。一塁走者の古賀はスタートが切れておらず、慌てる必要はなかった。失点に直結することはなかったが、試合のリズムを乱すプレーになった。

 一時逆転に成功した四回の攻撃では、岡田監督らしくない采配もあった。1死満塁から梅野の中前適時打で同点に追いつき、木浪の左前適時打で勝ち越しに成功した1死満塁の場面。西勇は初球からバットを振り、2球目に二ゴロ併殺打。まだ回が浅く、試合が二転三転することを見据えた中での強攻策だったのかもしれないが、西勇には故意に近い形での三振を命じ、アウトカウントはひとつ増えるものの、打つ確率が格段に高い近本に2死満塁を託すものだと見ていた。

 阪神OBの中田良弘氏は「えっ、と思ったね。ここは西に三振させて、近本に任せるんだろうと思ってたから。去年まで岡田さんと野球を見る中で、こういう場面の時は、三振させなきゃアカンやろと言っていたし。いろんな考えがあってのヒッティングだったのかもしれないけど、岡田監督らしくない攻撃だとは思った」と語った。

 同点の六回、近本の適時内野安打に山田の悪送球が重なって2点を勝ち越したが、七回に西純の2四球からピンチが広がり、逆転を許した。それでも九回2死からノイジーの三塁打と大山の四球で作った一、三塁の好機で佐藤輝が逆転の2点適時二塁打。野球は筋書きのないドラマであり、不思議なことが起こるスポーツだと感じさせられた。

 絶体絶命の状態から簡単に転ばないのが今年の阪神だ。今季、2死無走者から挙げた得点はリーグトップの23得点。今季の総得点173における13%を占めている。2位は巨人で17得点、3位タイで広島、ヤクルトが12得点で続くのだが、2死無走者から得点を挙げた試合数もリーグトップの12試合で、9勝3敗の勝率・750を誇る。

 20日の広島戦では、九回2死から大山が右中間に二塁打を運び、佐藤輝の申告敬遠を挟んでドラフト1位の森下がサヨナラの左前適時打。21日の広島戦でも、四回2死から佐藤輝の左前打、森下の死球を経て、梅野が2点差に広げる中前適時打を放ち、勝利を飾っている。

 この日の六回も、2死から木浪の三塁線を破る安打、西勇が右中間への二塁打を放った二、三塁から、近本が一時勝ち越しの適時内野安打。九回の2得点を含めた6得点中4得点が2死無走者からの得点だった。

 中田氏は「去年までとは野球の質が違う。ここまでの粘り強さはなかった。ミスが出た中でも、勝ったことでプラスに反省できるのも大きい。負けて反省するのと、勝って反省するのとでは精神的にすごく違うからね。次の試合に引きずらずに済むから」と解説した。

 岡田監督は「でっかい1勝やなぁ。野球てな、最後まで分からんてもう。本当にな、3アウト目まで分からんということやろな」と手にした勝利の重みを感じつつ、野球の怖さも改めて身に染みた様子だった。野球は2死から始まる-。古くから野球界に伝わるフレーズである。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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