【野球】ダルビッシュのサインがネットオークションに 過去には駅&空港でトラブルも 異常に映るサインへの執着
侍ジャパンの宮崎合宿中、ある1枚の写真を目にした。小さな子供に対して、サインを手渡すダルビッシュの優しい表情&そして輝かく少年の瞳。プロ野球に関わってきた人間として、心を動かされたワンシーンで、幸せな気分にさせてもらったのは記憶に新しい。
その一方、悲しくなったのは現在、各オークションサイトでダルビッシュのサイングッズが転売されている事実。色紙、WBCの刻印が入ったボール、さらにはジャパンのユニホームまで並んでいた。
ダルビッシュの合宿参加でフィーバーに沸いた宮崎の地。第2クール中にはサインを求めるファンの圧で安全柵が壊れ、“あわや”の事態へと発展した。翌日には鉄柵が導入され、DJポリスも登場するなど万全の対策が施されるまでに。宮崎から名古屋へ移動する際には一般のロビーを通らず、直接飛行機に乗り込むスタイルも選手を守る“防衛策”の一つなのだろう。
かつて現場でプロ野球を取材していた際、移動の際は何度も危ういシーンを目にしてきた。ある選手が広島駅から移動しようとした際、サインを求める人たちがエスカレーターを駆け上がって選手を追ってきた。
その内の1人がホームに上がった選手にぶつかり、線路に向かって背中を押す形となった。慌てて「すみません」と謝罪したが、振り向きざまに怒りをにじませた選手の表情を今も忘れることができない。もし新幹線がホームに入ってきていたら、もしその選手がバランスを崩して線路に落ちていたら-。ケガするだけなく、命の危険性すらあったかもしれない。
また阪神担当時代、キャンプを終え那覇空港から帰阪する際、当時注目が高かった新外国人・ロサリオのもとにサインを求める人間が集中した。たまたま移動便が一緒だったため、球団スタッフと一緒にガードする形となったが「いったいこれは何なんだ!ここはグラウンドじゃない。何でこういうことが起こるのか」と困惑の表情を浮かべていた。
選手にとってもサインを書く労力は計り知れない。米大リーグ、マリナーズから阪神に城島健司捕手が加入した2010年の春季宜野座キャンプ、元メジャーリーガーはほぼ毎日、ファンの求めに応じてペンを走らせていた。時には1時間超に及ぶこともあり「手首が痛い(笑)。腱鞘炎になりそう」と苦笑交じりに語っていたが、その表情は充実感に満ちていた。
サインを書くことでタイガースを応援してくれるファンが喜び、未来のプロ野球選手を目指してくれる子供たちのためになれば-。膝の手術を受け、鳴尾浜でのリハビリ中には「こんな状態でもオールスターのファン投票に自分の名前を書いてくれた人がいる。ファンあってのプロ野球選手だから。本当にうれしかったし、励みになったよね」と語っていた城島氏。それぞれの選手が“誰かのために”を思い、プレーで魅せるだけでなく、空いた時間にペンを走らせている。
1日夜には羽田空港にエンゼルス・大谷翔平投手が帰国した。その際、「サインくださーい」の声が飛んでいた。違和感を覚えたのは自分だけだったのだろうか。米国でもメジャーリーガーのホームランボールなどがオークションで販売されており、その価格によってプロスポーツ選手としての価値が上がるという側面は確かにある。ただこれまで日本で見てきたプロ野球選手のサインへの執着心は、どこか“異常”にも映る。(デイリースポーツ・重松健三)





