【スポーツ】初の全日本女王目指す三原舞依 試練乗り越えファンの心打つ「人生観」

 フィギュアスケートの全日本選手権が、今月22日から大阪府門真市の東和薬品ラクタブドームで開幕する。女子で勢いに乗っているのが、今月のグランプリ(GP)ファイナル(トリノ)で初出場初優勝を飾った三原舞依(23)=シスメックス=だ。2016年に3位に入り、初めて表彰台に立った時と同じ大阪のリンクで初の全日本女王を狙う。

 息つく間もないシーズンを送ってきた。8月のげんさんサマーカップから近畿、西日本選手権と続き、11月中旬からは欧州で3大会。GPシリーズ英国大会、フィンランド大会で2連勝し、初のファイナルで日本女子史上4人目の覇者となった。ファイナルのフリーでは「いつ倒れてもおかしくない」という状態だったと振り返ったが、最後まで安定感は失わなかった。

 今季序盤に目についたのは、これまで以上の体幹やジャンプの力強さだ。聞けば「もっと体力をつけたい」と夏の走り込みやトレーニングメニューを強化してきたという。「(練習で)ジャンプを跳ぶ回数を増やして、常に攻めていけるようにしていきたい」とも話していた。

 彼女にとっては、そこまで自分を追い込むこと自体が喜びなのだと思う。しなやかで時にはかなげにも見える演技がファンの心を揺さぶるのは、数々の苦難を乗り越えた芯の強さが見えるからだ。

 ジュニアで頭角を現した芦屋高時代に、膝に痛みを発症。難病「若年性特発性関節炎」と診断され、一時は入院や車いすでの生活を余儀なくされた。痛みとつきあいながらケアを重ねて競技を続けたが、19-20年シーズンは体調不良で全試合を欠場した。

 1年半のブランクを経て競技会に復帰したのは、20年秋の近畿選手権。しかし、昨年の全日本選手権では、僅差の4位に終わり、五輪代表には届かなかった。病を乗り越え、ブランクを乗り越え、どうしてもつかみたかった切符だった。今季の飛躍はその悔しさを胸に挑んだ、フィジカル強化やカナダへの単身スケート留学など新たな試みの成果だろう。

 取材でよく口にするのは「感謝の気持ち」。取材が終わると「遅くまでありがとうございました」「遠いところまですいません」と報道陣に声をかける。プライベートでも、医療用ウィッグのために自身の髪を贈る「ヘアドネーション」に参加するなど、福祉活動にも関心が高い。自分に関わるすべてのものへの「感謝」の表現には、スケートができる喜びがあふれている。

 フィギュアスケートはスポーツでありながら表現力が問われることから「芸術」だと評する人もいる。三原にトリプルアクセルや4回転の大技はない。ただ、指先まで神経が行き届いた演技が高得点につながっているのは、どんな試練にも真摯(しんし)に向き合う「人生観」が表現されているからかもしれない。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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