【野球】阪神・佐藤輝の「ミスタータイガース」襲名は、4番が必要十分条件ではない

 阪神・佐藤輝明内野手(23)の「ミスタータイガース」襲名は、4番を打つだけが必要十分条件ではないだろう。

 3月25日にプロ野球が開幕する。新型コロナウイルス感染症拡大の影響はあるが、スタンドにファンを入れて試合ができることで、昨年以上の盛り上がりは必至だろう。

 その中で佐藤輝の動向も注目だろう。新人だった昨季は8月後半から失速したが、24本塁打で新人の左打者としては最多本塁打を記録。田淵幸一氏(75)が持つ23本塁打という球団新人の最多本塁打記録も更新した。

 今季は開幕を4番で迎えることになり、ミスタータイガースへの第1歩を歩みだすことになるだろう。だが、4番は、ミスタータイガースの必要十分条件ではない。必要十分条件とは数学用語だが、ある事柄が成立するための必要にして十分な条件のことである。佐藤輝の場合、4番はミスタータイガース襲名の必要条件ではあるが、それだけでは十分条件を満たすことにはならない。

 日本のプロ野球界には、これまで「ミスター○○」と呼ばれた選手が何人かいた。私はこれまでプロ野球球団を7球団担当しており、数多くの野球関係者を取材してきた。その経験をもとにあくまでも私見だが、代表的な人間を3人挙げるとすれば、ミスタージャイアンツの長嶋茂雄氏(86)、ミスター赤ヘル、山本浩二氏(75)、そしてミスタータイガースの掛布雅之氏(66)だろう。

 この3人には共通点がある。3人ともチームの優勝に貢献し、自らも数多くの打撃部門のタイトルを獲得している。また、3者ともゴールデン・グラブの前身であるダイヤモンドグラブを何度も受賞している守備の名手という点だろう。

 さらにチームの内外にライバルが存在していた。長嶋氏の場合、阪神に故村山実氏という対戦相手がいた。私は村山監督時代に、本人の口から1959年6月25日に後楽園球場行われた天覧試合で、長嶋氏に浴びたサヨナラ本塁打について「あれはファウルや」と聞かされ、その執念に驚いた記憶がある。また、同じチームには世界の本塁打王と呼ばれた現ソフトバンク球団会長の王貞治氏(81)がいた。

 山本氏の場合は東京六大学時代から修練してきた、中日のエースとして君臨してきた故星野仙一氏という存在があっただけはない。チーム内にいた鉄人と呼ばれた故衣笠祥雄氏とも己の技量を磨き続けていた。

 掛布氏も、セ・リーグMVPや2度の最多賞に輝いた江川卓氏(66)という同学年の巨人のエースがおり、何度も名勝負を演じていた。さらに、チーム内には東京六大学のスター選手だった岡田彰布氏(64)もいた。

 佐藤輝の場合、チーム内に大山悠輔内野手(27)という存在はいるが長嶋氏、山本氏、掛布氏のような高レベルの争いをする関係には至っていない。また、現段階では対戦相手で名勝負を演じている投手もいない。本来は三塁手だったため、外野手としての技量はまだまだ発展途上だ。

 佐藤輝の潜在能力は疑う余地はない。1日でも早く「ミスタータイガース」を名乗る日を野球ファンは待っている。(デイリースポーツ・今野良彦)

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