【スポーツ】母は元バレー代表の美人エース、娘2人は女子バスケのホープ 夢は2世代オリンピアン

 娘たちにちなんでバスケットゴール前で笑顔を見せる藤本(旧姓山内)美加さん
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 全日本女子バレーのエースアタッカーとして活躍し、抜群の人気を誇った藤本(旧姓山内)美加さん(52)は今、徳島県にいる。松茂町体育施設の職員として勤務しながら、バスケットボールの世界へ進んだ愛娘2人の活躍を願う。家族の夢は2世代オリンピアン-。

 バスケットボールの試合がある週末になると、藤本さん(以下、美加さん)は「心拍数が上がりっぱなしになる」という。

 現地で生観戦できないときも必ずライブ中継で娘の姿を追う。ハラハラドキドキ。心臓が破れそうになるが、それでも見る。

 「子供たちの試合を励みにしているんです。この仕事を頑張ったら、次の試合また見に行くぞって」

 長女の愛妃(あき)さん(23)は女子日本リーグ(Wリーグ)の富士通レッドウェーブに所属している。

 バスケの名門、桜花学園から東京医療保健大へ進み、2017年の夏季ユニバーシアード大会(台北)で銀メダル、19年(ナポリ)は4位の実績で実業団の道へ進んだ。182センチ。母譲りの恵まれた体格でセンターを担う。

 次女の愛瑚(まこ)さん(22)は姉と2つ違い。同じ桜花学園からU16アジア選手権大会準優勝などの実力で“憧れ”のENEOSサンフラワーズへ。179センチのフォワードだ。

 美加さんは2人の娘を「同じ負けず嫌いだけど、長女は性格をガンガン、プレーに出すタイプ。妹は闘志はあるが冷静」と話す。

 今はキャリアを重ね、ポジションをつかみ取るために力を蓄えている時期。

 トップアスリートの“血統”を背景に周囲から“代表入りは?”など気の早い声も耳にするが、「簡単ではないです。まだ2人とも(所属チームの)スターターではないですから」と控えめだ。

 かつて美加さんはパワーと高さを生かしたバックアタックを武器にダイエー、そして全日本の代表選手として活躍。大林素子と人気を二分する実力でバルセロナ、アトランタ五輪に出場した。

 対話を重視しながら体力の限界まで追い込む名将、アリー・セリンジャー氏特有の指導で素質が開花。「毎日が陸上部。泣きながら練習していた」と懐かしそうに振り返る。

 だが、当時の自分と2人の娘を「比べるようなことはしない」という。

 そもそも娘たちは、なぜバスケットボールの道を選んだのか。

 愛妃さんが小学1年のときだった。“ミニバス”の1日体験で、校庭にあるリンクにシュートを決めたのがうれしくて、それ以来とりこになった。

 「バレーを強制したことはなくて、何かスポーツをしてくれたらと。子供が楽しく感じるのが一番だと思ってました。やりたいことを精一杯やらせてあげたかった」

 小さいながら野球が得意だった愛瑚さんも小学校に入ると、お姉さんにつられてバスケへ。美加さんも覚悟を決め、それからは“応援団”に回って試合会場へ足を運んだ。

 セリンジャー氏からはバックアタックの技術だけでなく、栄養管理についても学んだ。その知識を生かし、試合には手作り弁当と疲労回復にいいオレンジジュースを持参。夏場には食べやすい麺類を選んだ。

 チームに配給される弁当は脂っこくて栄養のバランスに欠けていたから。この手作り弁当をほかのお母さんたちも模倣した。

 娘2人が少し大きくなったころ、五輪のことを聞かれ、「やるなら目指して、あそこでプレーしてほしい」と話したことがある。

 「オリンピックは、ほかの国際大会とは緊張の度合いが違う。あの雰囲気は感じたことがなかったの。今でも思い出すよ。緊張のあまり記憶が飛んで、ところどころしか覚えてないけどね」

 貴重な体験談を2人は真剣に聞いていた。

 今は遠く離れたところから、励ますことしかできない。

 ミスをしても「下を向くな」

 ベンチを温めることが多くても「腐るな」

 少しでもシュートをしたら「よかったね」

 「ケガをしたり試合に出られなかったり、これまで苦労や泣いてる顔を見てきているので、前向きな声かけだけは忘れないようにしています。あとは本人の努力次第ですね。アジア大会は若手に代わってきてましたけど、選ばれていないということは、まだ認められていないということですから。もっとレベルアップしないと」

 夫の藤本俊彦さんはプロ野球オリックスの元選手で現在、スポーツトレーニングの指導をしている。たまに娘たちが徳島市内の家に帰って来ると、必ず体育館を借りて練習をサポートし、ケガ予防にもなるマッサージも施す。子供の夢は家族の夢でもある。

 俊彦さんの郷里に暮らして20数年。秋田生まれの美加さんも今ではすっかり徳島県人だ。鳴門に近い松茂町で体育館などのスケジュール管理・運営を行い、バレーボール教室も手掛ける。

 「子供たちと触れ合うとリフレッシュできるし、バレーから離れずにやっていけたら」

 底辺の拡大は難しいが、大きなやりがいを感じている。

 東京五輪で「アカツキファイブ」が銀メダルに輝き、アジアカップでは5連覇を達成した。パリへ向けて盛り上がりを見せる日本女子バスケだが、最近、少し考えるようになった。もし娘たちがバレーをしていたらと。

 「どこのポジションで、どんなスパイクを打っていたんだろうって。バックアタックとか。一緒にやったら楽しかったかな」

 少しだけ想像して、また現実に戻る。

 最高のステージに立つため大切な時を過ごす娘たちへ、母はこれからも励ましの言葉を贈り続けていく。(デイリースポーツ・宮田匡二)

 ◆藤本美加(ふじもと・みか=旧姓山内)1969年10月7日、秋田県由利本荘市出身。182センチの長身と最高到達点317センチの高さを生かしたバックアタックで頭角を現し、ダイエーの第1回Vリーグ優勝に貢献。バルセロナ(5位)、アトランタ(9位)五輪に出場した。1997年に元オリックスの藤本俊彦さんと結婚し引退。娘2人。現在は岡田企画に在籍し、指定管理者として松茂町体育施設に勤務している。

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