【野球】勝負師・原監督 奇襲に込めた“ド執念采配” 決断と実行「われわれの役割」

 6回2死二、三塁のピンチに菅野(中央左)らナインに話す原監督=11月11日、神宮
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 デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」は、巨人・原辰徳監督(63)が、“ド執念タクト”を振るったヤクルトとの11月11日・CSファイナルS第2戦(神宮)です。重要な局面で、満塁策という勝負手を繰り出した指揮官。巨人担当キャップ・伊藤玄門記者(48)が、勝負師の采配を振り返ります。

  ◇  ◇

 今季は3連覇を逃し、3位に終わった巨人。CSファイナルSは1勝もできずに敗退した。屈辱のシーズンを送ったが、原監督が最後の最後に見せた“ド執念の采配”が印象的だった。

 アドバンテージを含め、2敗で迎えたヤクルトとのファイナルS第2戦。勝敗の分岐点は0-1の六回2死二、三塁だった。この場面で原監督がベンチを出てマウンドに足を運ぶ。菅野に意思を伝え、西浦を申告敬遠する策を取った。右腕は投手・高橋の代打・川端に押し出し四球を与え、失点を重ねて試合に敗れた。

 試合後の指揮官は、こう語った。「流れが、わが軍になかなか来ないというところで。こっちが動いて相手を動かして、そして好転させたいというのがありましたね」。申告敬遠で、6回無失点と苦しめられていた高橋を降板させ、代打の切り札・川端を使わせて相手ベンチを動かす。そして、エースが絶体絶命のピンチを無失点に抑えれば、流れを引き寄せられるという計算があった。

 決断と実行に移すタイミングが重要だった。「例えば八回とか九回で満塁策というのは俺はない。あえて(四球で塁に)出させる必要はない」。六回でエースが好投を続けていた状況などを考慮し、終盤に勝負をかけるための作戦だった。

 勝負師の原監督にはタクトを振る際、「大きく分けると正攻法と奇襲」があるという。今回のケースは「奇襲」だ。「奇襲っていうのはリスクを背負った上で、なおかつ勝負する。それに勝った時には2倍くらい優位に働くケースがある」。百戦錬磨の将が、ド執念を込めた“いちかばちか”の奇襲だった。

 「正攻法」のケースは、11月6日・阪神とのCSファーストS第1戦の采配だ。五回無死一塁でウィーラーが送りバントを決めた。助っ人は来日7年目で初の犠打成功。ここから好機が広がり、難敵・高橋から先制点をもぎ取った。

 「あれは完全なる正攻法」と平然と語る。ナインに送りバントの練習をさせ準備を整えた上で取った策。エンドランなどの「奇襲」ではなく確実に進塁させる「正攻法」を選んだ。「仮に失敗したとしても『まだこういう作戦が残っている、こういうことでも戦える』というのが正攻法」と言う。

 正攻法か奇襲か-。「その部分を使い分けることが、われわれの役割」。結果として勝利には結び付かなかったが、短期決戦で見せた周囲の度肝を抜くタクトが印象深かった。

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