文字サイズ

【野球】阪神とヤクルトで感じた“野球の質”の違い 

 今年、阪神のゲームを見ていて「えっ!?」と思ったシーンがあった。ペナントレースも終盤を迎えつつあった9月11日、マツダスタジアムで行われた広島戦の五回表。1死走者無しから投手の秋山が初球を打って投ゴロに倒れた。続く1番・近本も初球のカットボールを打ち上げて、中飛に終わった。

 以前、ロッテ、メジャー、阪神でプレーした西岡にこんな話を聞いたことがある。投手が凡退し、2死走者無しで1番に打順が回ってきた際、西岡は必ずといっていいほどセーフティーバントの構えを見せてボールを見送った。絶対に初球を打たなかった。

 その理由を聞くと「ピッチャーが準備する時間が必要やから。チャンスやったら初球から打ちに行く場合もあるけど、基本は待って時間を稼いでから」と明かしていた。特にここ数年はイニング間の時間設定が厳しくなった印象がある。今季も投手交代が遅れたことにより、リリーフ投手が途中で投球練習を強制終了させられる場面もあった。

 さらに慌ただしく準備してマウンドに上がることで、投手がリズムを崩す危険性は否めない。ほんのささいなことかもしれないが、崩れる可能性を少しでも排除しようとするプロの考え方。一方で投手の初球打ちについても疑問が残る。

 例えば無死から9番に入った投手が簡単に初球を打ってアウトになると、1、2番打者に負担が向く。攻撃を考えれば1死からでも1、2番でチャンスメークしてクリーンアップでかえす流れを作る方が、得点する確率は高まる。

 投手がヒットを打つ可能性と野手がヒットを打つ可能性、どちらが高いか-。他球団の投手が同様のことをした時、中継中にOBの解説者からたしなめられていたこともあった。他にも9番まで打順を回して次のイニングを1番から始めればいい2死一塁の状況でも、走者がスタートを切ってしまう。得点差や状況を把握していないかのような守備のポジショニング。そして失策した選手がマウンドの投手に声をかけにいかなくなるシーンも多かったように思う。

 チーム内の連携に違和感を覚え、“野球のセオリー”を逸脱する場面があった阪神。「細かいことの積み重ねよな。こういうことは昔はできとったんやけどな…」と元阪神監督でデイリースポーツ評論家・岡田彰布氏は今季の評論中に肩を落としていた。原巨人、落合中日としのぎを削った2000年代後半、互いに隙を与えない野球は異様で独特な緊張感をかもし出していた。

 仮に敗れたとしても納得できる負けが多く、技術だけでなく戦略、戦術的な部分でもプロ野球の面白さを感じるゲームが多かった。そしてその一端を今年、思い起こさせてくれたのがヤクルトの戦いぶりだ。

 戦力が整った交流戦以降、本当に相手に隙を与えなかったように感じる。確かに流れを変えてしまうようなミスはあったが、カバーし合って傷口を最小限にとどめた。サンタナの打席でのカウントの作り方など、本来なら打ち気にはやる助っ人までも自己犠牲の精神を貫き、その積み重ねが一体となって強さを生み出したように映る。

 12日のCSファイナルS突破を決めた第3戦でのベンチの雰囲気、試合後の表彰式で見せていた選手たちの表情。本当に全員で野球をやって、全員で勝ち取った日本シリーズだったんだなと感じさせた。その裏で浮き彫りとなった阪神との差。決して戦力だけではなく、“野球の質”の違いがあるように感じた。(デイリースポーツ・重松健三)

関連ニュース

    編集者のオススメ記事

    オピニオンD最新ニュース

    もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス