【野球】栗山英樹は野球界の渋沢栄一 日本ハム監督10年 計り知れない功績

 日本ハム・栗山英樹監督(60)が今季限りで退任する。就任1年目の2012年からリーグ優勝2回、16年には広島を破って日本一に輝いた。球団歴代最長の監督在任10年間で積み上げた勝利数は同最多684勝。誰よりも野球を愛し、情熱を燃やして、日本球界に新風を巻き起こし続けた希代の知将だった。

 大谷翔平を二刀流で育て上げた栗山英樹とはどんな人だろう。ドキドキの初対面で「よろしく!」と言われて握手を交わした記憶は鮮明で、何か熱いものを感じた。「思っていることを悔いのないようにやるしかない」。批判は真正面から受け止める。その上で、指揮官は自分の信念を貫いて戦い続けていた。

 「野球にはもっともっと大きな可能性がある」。19年シーズンに栗山監督からよくこの言葉を聞いた。同年は米メジャー・レイズが採用したオープナー制度を日本球界で初めて取り入れ、打者の打球傾向に基づいた大胆な守備シフトも敢行。記者席から試合を見ていて驚きの連続だった。

 もちろん目の前の戦いに勝つことが最優先事項。その中で、選手たちの潜在能力を引き出すために次々と策を講じていった。「俺は今ある常識を疑ってる。考え尽くせば何かが生まれる。本当に努力しないといけない。選手のために」。飽くなき探求心に選手を思う親心。座右の銘「夢は正夢」を胸に、まだ見ぬ景色を探していた。

 そんな指揮官はしばしば、我々との雑談の中で渋沢栄一の話をしてくれた。言わずと知れた「日本資本主義の父」である。国民みんなが豊かで幸せになれるように、この手で日本を変えたい-。一途な思いで新時代を切り開いた同氏の著書「論語と算盤」から学び、選手育成やチーム作りのヒントを得ていた。

 「最後は魂の勝負。どれだけ勝ちたいか」。批判にさらされても信念を曲げず、新たな可能性を信じ続けて手を尽くす。そんな監督を選手たちは皆、慕っていた。時代も違えば働く場所も違う。だが、記者はどこか重なり合う部分があると感じている。栗山英樹は野球界の渋沢栄一。その功績は計り知れない。

(デイリースポーツ・中野雄太)

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