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【野球】先人の言葉からひもとく阪神・西純矢の直球 打たれない“強さ”を秘める

 力投する西純(撮影・北村雅宏)
 プロ初先発で力強いボールを投げ込む西純(撮影・田中太一)
 1回、村上を中飛に打ちとる西純(撮影・飯室逸平)
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 前夜、阪神・西純矢投手(19)のピッチングを見て、若手記者時代に教えられた言葉を思いだした。阪神のチーフスコアラーとして03、05年のリーグ制覇に貢献し、2011年の北陸遠征中に急逝した渡辺長助さん。春秋のキャンプ中、いつもスコアラー席の近くで練習を見ていた。設置されているスピードガンをチェックするためだったが、「スピードだけでピッチャーを判断したらいけないよ」と言われた。

 「ボールの強さを知るためには、どこにファウルが飛んだかを見とけばいい。強ければ反対方向にしか飛ばない。逆に引っ張り込まれたら、スピードが出ててもそのストレートは『弱い』ということなんよ。そんなとこを見てたら、また違ったもんが見れると思うよ」

 当時は回転数などを測定するトラックマンといった機器はなかった時代。記者が投手の力量を測る頼りはスピードガンだけだった。しかし、150キロでも簡単に打たれるピッチャーがいれば、140キロ前後で打たれないピッチャーもいる。真の力量を把握し、チームとして対策を立てるために-。渡辺さんの視点は先人の知恵であり、プロの目線だったように思う。

 その言葉を刻んで野球を見ていくと、確かに状態のいいピッチャーほど逆方向に差し込まれたようなファウルが多い。そして前夜の西純も…共同通信デジタルのデータを見ると、全87球のうち65・5パーセントを数えたストレートの平均球速は144キロ。プロとして特別に速いというわけではないが、ヤクルトのバッターはことごとく差し込まれ、引っ張られたファウルはほとんどなかった。

 特にリーグ本塁打王の村上に対しては、第1打席で投じた全8球中、実に7球の直球勝負で中飛に仕留めた。第2打席もストレートをレフトへ運ばれたが、フェンスギリギリでサンズがジャンピングキャッチ。ストレートの強さがなければ、スタンドに届いてもおかしくないような打球だった。

 二回り目以降は女房役の梅野がうまくカーブを使い、強いストレートがより生きる形に。配球だけでなく、ゆったりとしたフォームから繰り出されるボールとの“緩急差”も、ヤクルトの打者を差し込んだ要因とも考えられる。

 阪神のドラフト1位投手では球団史上初となる初登板初先発での初勝利を5回無安打無失点でつかんだ。お立ち台では「圧倒的な投球ができるようなピッチャーになります!」と宣言した。ちょうど10年前、チーム全体が悲しみにくれた渡辺さんの急逝。その大切な教えを改めて思い起こさせてくれた19年度ドラフト1位右腕のピッチング。これから大きく、大きく育っていってほしい。(デイリースポーツ・重松健三)

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