【スポーツ】コロナ禍で若者ゴルファー急増中 収束後の人気継続にメーカー期待
コロナ禍で3密を回避できるゴルフの需要は高まったといわれる。日本国内に初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから1年以上が経過した。年明けに再発出された緊急事態宣言もいまだ全面解除には至っていない。日本経済が大打撃を受けた中、拡大したゴルフ人気にメーカー側の視点から迫る。
ゴルフ業界も最初の緊急事態宣言下では逆境に置かれた。昨春、不要不急の外出を自粛するムードが全国的に広がった。有名人がゴルフ旅行先で新型コロナに感染するなど、初期段階で負のイメージがついたことも影響した。
長くコロナ禍での生活を強いられる中、事態は変化した。1回目の緊急事態宣言明けから、屋外レジャーのゴルフはひそかに注目を集めるスポーツになった。大手総合スポーツメーカーのミズノでは、昨年秋から冬にかけて直営ゴルフスクールの新規受講者数が前年比で増加。一時期は予約が取りにくい状況になっていたという。
近年はゴルフを敬遠しがちだった20~30代という若年層の割合が増えたことが大きな特徴だ。ミズノの広報担当は「ゴルフは密を避けて、なおかつ体を動かすこともできる。コロナによる生活環境の変化を機に若者の間でゴルフを始める方が増えています」と分析する。
同社では店頭でのクラブフィッティングの体験者数でも同様の傾向が見られるという。そうなると受注額も増える。フィッティング体験だけでなく、実際にクラブを購入する若者も少なくないというデータが出ている。
ダンロップブランドなどを展開する住友ゴム工業では、昨年の全国を対象とした緊急事態宣言が解除されて以降、クラブ販売の実績が急速に回復した。昨年10月に発売されたスリクソンの新製品ZXシリーズは松山英樹が使用した効果も重なり、特にドライバーは発売5カ月で前作比115%と好調に推移した。
松山モデルに限った話ではない。初心者用のキャディーバッグ付きクラブセットも高い需要が続く。住友ゴム工業の広報担当も「コロナを機に若年層や新規参入のゴルファーが多くなり、それが販売実績にも表れています」と説明する。
以前はほかに娯楽を求めていた若者の目が、コロナによる生活様式の変化でゴルフに向けられるようになった。若いカップルにとって、ツーサムでラウンド可能なゴルフ場や屋外のゴルフ練習場などはデート場所の一つになっているという。
もともとゴルフは老若男女が楽しめる、生涯スポーツの代表格である。首都圏の4都県を除く地域では、2月末で緊急事態宣言が解除される。この先、コロナが収束すると、若者は再びゴルフから離れていくのか。それとも人気は定着し、さらに拡大するのか。
ミズノの広報担当は「これからも若年層のゴルフ人口の増加が、ゴルフ市場の活性化につながると思います。弊社は今後もゴルファーに寄り添ったビジネスを展開していきます」と話す。災い転じて福となせるか。ゴルフ産業にとって、アフターコロナが重大な分岐点となる。(デイリースポーツ・斉藤章平)