【野球】受け継がれてほしい阪神の伝統 球児が語気を強めたある事件とは?

 一昔前、阪神にはこんな伝統があった。「オフ期間、主力選手が必ず鳴尾浜で自主トレを行う」-。09年から阪神担当になり、覚えているだけでも野手は金本、新井、赤星、今岡。投手では安藤、福原、藤川ら主力選手たちが必ず、鳴尾浜を訪問。全国各地で自主トレを行っている中、その合間を縫って若手と一緒に汗を流していた。

 「こうやって主力が間近で汗を流すことで、若い選手の刺激になる。聞きたいことも聞ける時間ができる。別に(主力選手たちに)強制しているわけではないんだけど、本当にありがたいよね」。球団スタッフからその理由を教えられた際には納得した。少しでも後輩たちの刺激になろうという姿勢が、当時のベテラン選手には受け継がれていた。

 その中で最も印象に残っているのが藤川球児氏だ。2012年、鳴尾浜で自主トレを行っていた際、投手陣が着替えや練習の準備に使う小屋に古びたシューズや道具などが散乱していた。

 それを発見すると「小屋が汚い。これでは1軍の選手と差が1つの練習でも、そういうのがないと、良い練習にはつながらない。見られている感覚というのがないのかな」と語気を強めた。「意識と言えば低レベルな話だけど、それでプレーが良くなるというよりも見られている感覚。いつ見られても良いようにね」。スリッパが乱れていればきちんと並べ直すのが、自身が寮生、若手のころの基本だったという。

 「若い選手がロクな選手に育たない。若手(新人)はそれ(整理整頓していない状況)を見て学んでしまう」と危機感を募らせていたのをよく覚えている。当時31歳で不動の守護神としてチームに君臨していた背番号22。「何をやってるんだろうなと。2軍でも投手コーチやスタッフが見れば分かること。ファームはそういう場所」という言葉にただただ圧倒された。

 その後、鳴尾浜の施設では整理整頓が徹底されていた。さらにメジャー挑戦から再び阪神に戻ってきた時も、藤川はオフになると時間を見つけて鳴尾浜で汗を流していた。

 そういうベテランたちの姿勢が次代のタイガースにも受け継がれていくか-。藤川、能見、福留らベテラン勢がタテジマのユニホームを脱ぎ、チームは新たな時代に入っていく。その試金石となる2021年。例え後輩たちから煙たがられたとしても、いい伝統は残っていってほしいと思う。(デイリースポーツ・重松健三)

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