【競馬】20年に飛躍を遂げた松山弘平が得たものとは

 2020年の中央競馬も、残すところあと1週となった。アーモンドアイの芝G1・9勝の大記録に、コントレイル、デアリングタクトによる牡牝の無敗三冠。その3頭の激突となったジャパンCなど、日本競馬界にとって歴史的な一年になったのは間違いない。その中で、私が個人的に印象に残っているのが、デアリングタクトの主戦である松山弘平騎手(30)=栗東・フリー=の活躍だ。

 デビュー12年目の今年は、12月20日終了現在でJRA年間125勝。自身初の大台突破で、キャリアハイだった昨年の91勝を既に30勝以上も更新した。JRA重賞も自己最多の9勝。「三冠を含め、たくさんいい馬に乗せてもらったのが大きいと思います」と、周囲への感謝を口にする。

 「年明けにサウンドキアラで(京都)金杯を勝たせてもらって、そこからもいいリズムで重賞を勝つことができました。いいイメージでいいスタートが切れたことが、いい方にいい方に行った部分はありますね」。

 東海S(エアアルマス)、きさらぎ賞(コルテジア)、京都牝馬S(サウンドキアラ)と、1、2月で重賞4勝を含む19勝と好発進を決めた。勝負事では、流れをつかむことも重要。ただ、そのためには、確かな技術の裏付けが必要になる。サウンドキアラを管理する安達昭夫調教師(61)=栗東=は、そこを高く評価していた。

 「彼は4コーナーまでの運び方を見ても、いろいろな引き出しを持っていますよね。それを馬や状況に応じて使い分けながら乗っています。もともとうまいジョッキーだったけど、そこからさらに努力してきた結果だと思いますね」。

 まだ30歳で、気力や体力も充実しており、そこに経験や研究によって今まで以上に高いレベルの技術が加わった。さらに、安達師が「いつまでも低姿勢ですしね。彼の人間性という部分もあると思います」と話す通り、周囲から信頼される誠実な人柄というのも大きい。心技体の全てがかみ合っている印象だ。

 人間性で言えば、師匠の池添兼雄調教師(68)=栗東=も、以前こんなことを話していた。「デビューの頃から、ほとんど怒ったことがない。きちんとあいさつはするし、礼儀もしっかりしている。人の話もちゃんと聞く子だしね」。周囲の言葉に真摯(しんし)に耳を傾け、自らの成長につなげている。

 今年はジョッキー自身も、確かな手応えをつかんだ一年だったと振り返っている。

 「三冠が獲れたことで自信もつきました。いい経験をさせてもらいましたし、それによって自信を持って乗れているというのもあると思います」。

 私は過去にサッカーやラグビー、高校野球など、他競技も取材させてもらったが、常に瞬時の判断が求められるアスリートにとって、自信を持ってプレーすることの大切さは何度も耳にした。彼の迷いのない騎乗が、好結果に結びついているのは間違いないだろう。

 史上初となる無敗の牝馬三冠馬デアリングタクトとの出会いは、松山弘平を騎手として一段上のステージに昇華させた。競馬の世界では、「馬が人を育てる」とよく言われるが、まさにその通り。それでもなお、「まだまだ足りない部分はありますし、今に満足することはなく、もっと結果を出さないといけないと思います」と、謙虚に高みを目指し続ける姿は、さらなる飛躍を予感させる。

 今週末、阪神Cでは「前走は外枠で流れに乗れなかった。相手は強いですが、やれていい馬。そろそろ結果が出したい」と意気込むサウンドキアラに騎乗。さらに有馬記念は、「1週前に乗せてもらいましたが、力はありそう。最後の脚はいいものを持っていますから」と期待するサラキアとの初コンビで臨む。

 平成生まれ初の三冠ジョッキーが、どんなレースを見せてくれるのか-。進化を続けるその手綱さばきが、今から楽しみでならない。(デイリースポーツ・大西修平)

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