【野球】斎藤投手コーチの財産 1年で去るヤクルトに残したもの

 わずか1年で球団を去る。投手再建を託されたヤクルトの斎藤隆投手コーチが、最後まで受け止めた最下位という十字架。「勝ちに導ける指導者が評価されるべき」。悩み抜いた末の決断だった。

 新しい風になりたかった。過ごした時間はたった1年。それでも思い出を問われると、斎藤コーチからは選手たちの名前が次々に挙がった。「清水がタイトルを取れそうだったり、寺島が30試合に投げて2点台中盤の防御率。楽天からきた今野だったり、新戦力の長谷川だったり」。目指したのは若手の育成、台頭。明るい希望の光は誇りだった。

 一イニングごとに、先発投手陣に寄り添った。そこにあったのは抑えても、打ち込まれても変わらない不変の姿。「信頼関係を築くことが1番大事」と歩み寄り、支え続けた。それでも違った理想と現実。好転しない結果に、「次第に考える時間が増えた」と難しさを感じたという。

 50歳で、初めて挑むコーチ業だ。球団から受け取った恩を、選手たちへの愛情に変換した。ピンチの場面で向かうマウンド。苦しむ投手たちに「『愛しているぞ』と伝えたい」とキャンプ中からもくろんでいたというが、それはかなわず。それでも「練習前のミーティングでは1、2回言った記憶があります」と笑った。投手力が課題と叫ばれるチーム事情。うつむきがちな投手陣を最後まで、無償の愛で包み込んだ。

 最終戦後に選手たちに贈ったメッセージがある。伝えたかったのは、survival of the fittest、『適者生存』の考え方だった。

 「この世界で生き残るために何を自分が磨き上げていけばいいのか。それを考えて野球をやってほしい。いい投手、強いボールを投げられる投手だけが生き残れるほど甘い世界ではないから」

 チームが求める、唯一無二の投手になれ-。斎藤投手コーチが1年間で残した愛情と財産。ヤクルト投手陣が、来期以降結果で恩返しすることに期待したい。(デイリースポーツ・松井美里)

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