【芸能】配信ライブの長所と短所 “ウィズコロナ”の新しいエンターテインメント

 音楽業界は新型コロナウイルス感染拡大により2月下旬以降、ライブ中止が余儀なくされ、大打撃を受けた。

 政府のガイドラインで7月10日からは「収容5000人もしくは最大収容数の50%」の有観客ライブが可能となったが、ビッグネームによるドームやアリーナなどの大型会場に観客を入れたライブは、いまだ実現せず。今月1日には5000人の人数制限が撤廃される予定だったが、東京を中心とした感染者の増大により、政府は上限5000人を今月末まで維持する方針を示した。

 逆境の中、“ウィズコロナ”の新しいエンターテインメントとして定着しつつあるのが、無観客での有料配信ライブだ。サザンオールスターズ、浜崎あゆみ、東方神起ら、人気アーティストが次々と開催。サザンはデビュー記念日の6月25日に横浜アリーナで実施して、約18万人がチケットを購入し、推定50万人視聴という盛況ぶりだった。

 LDHは7月2日から7日連続で「LIVE×ONLINE」と題して所属アーティストが日替わり公演。躍動感やスピード感を伝えたいという思いから、ドローン撮影を導入した。トークコーナーでファンと映像をつないだり、書き込まれたコメントに反応したりと、双方向コミュニケーションを実現。FANTASTICSのリーダー・佐藤大樹は「いろんな地域の方に見ていただけるし、『離れているけどつながってる』がコンセプト」と胸を張った。

 会場には行けないものの、ファンにとって有料配信ライブは、移動のリスクや三密を避けて、自宅で楽しめるというのがメリットだ。チケット代も従来の半額以下のケースが目立つ。反面、問題点も散見される。

 欅坂46は7月16日のオンライン公演で、グループの改名を電撃発表した。キャプテンの菅井友香が「グループの名前が一人歩きして、耳をふさぎたくなるくらい悩まされた日もありました」と苦悩を吐露。本来ならば客席から励ましの声も飛ぶところだが、文字通り静まりかえった会場で、反応が見えないまま話し続けることには、相当な精神的重圧を受けていただろう。ステージに立つアーティストにとって、ファンの温度を直接感じられないことが、不安や戸惑いにつながる可能性がある。

 主催者側として、音楽関係者が配信ライブの最大のデメリットとして指摘するのが、コンサートグッズの販売についてだ。

 「アーティストによってはネットで売ってますが、会場の雰囲気で購入するファンが多いですから、どうしても売れにくいんですよ」

 ライブに関する売り上げは、チケットよりもグッズが上回るケースも多く、制作費に対してチケット代だけだと赤字になることさえある。無観客だと警備員や誘導スタッフを配置する必要がなく、人件費が抑えられるとはいえ、グッズ収入が見込めないのは、“死活問題”になりえる。

 「今の状態ではステージ演出も限られますし、ファンの満足度を考えると、単純にチケット代を上乗せして解決するものではありません。これからも新たなビジネススタイルを模索していくことになりそうです」

 コロナ収束が見えない中で、再始動を迎えているライブエンターテインメント。新しい様式には、まだまだ改善の余地がある。(デイリースポーツ・丸尾匠)

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