【スポーツ】虐待、いじめ…社会問題に取り組む元ボクシング日本王者 中広大悟さん

 プロボクシングの元日本王者で、現在は広島市で作業療法士として病院に勤務している中広大悟さん(38)が虐待やいじめ、引きこもりなどの社会問題に取り組んでいる。

 2008年に日本スーパーフライ級王座を獲得し、3度の防衛に成功した中広さん。14年の引退後、国家資格の作業療法士の資格を取り、現在は「医療法人せのかわ」が経営する「よこがわ駅前クリニック」(広島市西区)に勤務する。主に精神疾患の患者宅を訪れ、よりよい生活を送れるようにアドバイスしたり、リハビリを手伝ったりする訪問看護を行っている。

 仕事の傍ら、多くの社会問題にも目を向けてきた。その一つが子供への虐待やいじめの問題だ。中広さんはテレビやラジオに出演したり、講演会や募金活動、ボクシングイベントの開催などを通して防止を訴えてきた。

 「僕はボクサー時代にしんどい思いをたくさんしてきました。負けた時の挫折感や減量でのひもじい思いなどつらいことばかりでしたが、それでも命まで取られることはなかった。でも、虐待やいじめは命を落としてしまうこともあるんです。亡くなった子供たちが、どれだけ苦しくてつらかったかを思うと、自分はこの問題を絶対に放っておけない。何とかしないといけない。そういう思いで取り組んでいます」

 また、特定非営利活動法人「FOOT&WORK」にも所属し、高齢者、障害者の生活支援や子育て支援などにも取り組んでいる。現在、力を入れているのは引きこもりの問題。全国で100万人いるといわれ、年齢層も10代からシニアまで幅広い。原因も病気やケガ、不登校やネット依存、仕事・学業でのつまずき、精神疾患などさまざまだ。

 「僕自身も訪問看護で引きこもりの方と接することがあり、本人も家族も相談先を見つけられないまま事態が深刻化、長期化するケースもあります。現在、FOOT&WORKでは、広島向けの引きこもり支援情報のポータルサイトの開設を目指しています。このサイトにつながることで解決の糸口を見つけてもらえればと思っているんです」。サイト開設のための資金をクラウドファンディングで募っており、「まずは引きこもり問題を知ってもらい、関心を持っていただけた方に支援してもらえると助かります」(詳細は「FOOT&WORK」の公式サイトを検索)。

 中広さんがプライベートの時間も使って社会的弱者と呼ばれる人たちに寄り添うのには理由がある。「僕はボクサー時代、多くの人から応援してもらいパワーをいただいた。その恩返しをするために作業療法士にもなりました。皆さんに笑顔になってもらいたい。なぜなら笑っているところに幸せは飛び込んでくるからです。多くの人を笑顔にしたいという思いが僕の原動力です」。激闘の日々を送った13年間のボクサー生活があったからこそ、人の痛みも知ることができる。生涯のライフワークとして「笑顔の輪」を広げる活動を続けていく。(デイリースポーツ・工藤直樹)

 ◆中広大悟(なかひろ・だいご)1981年8月21日生まれ。広島県三次市出身。広島皆実高時代はサッカー部で3年時のインターハイで全国優勝。広経大進学後、広島三栄ジムに入門し、ボクシングを始める。01年にプロテストに合格し、同年デビュー。06年にWBC世界フライ級王座に挑戦したが判定負け。08年に日本スーパーフライ級王者となり3度防衛。14年4月に引退。通算30戦24勝(10KO)4敗2分け。広経大大学院卒。広島市在住。

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