【野球】吉田正、オープン戦0本塁打でも誰も心配しないワケ
実はオリックス・吉田正尚外野手は今年のオープン戦、12試合に出場し、29打数10安打の打率・345、3打点で本塁打は0だった。1試合だけ行われた3月21日、楽天との練習試合も一発は出ていない。
だが、首脳陣からもチームメートからも不安の声は聞かれなかった。開幕前とはいえ主砲に一発が出ていなければ阪神や巨人など人気チームなら大騒ぎだろう。誰も心配していない。それこそが吉田正のスゴさを現しているのかもしれない。
2月のキャンプイン時、西村徳文監督は「ここまでの実績を考えると本人に(調整は)任せてもいい。絶対に欠かせない存在。(打球は)シーズンに入って飛ばしてくれたらいい」とオープン戦0本塁打を予言するような言葉で信頼を表していた。
プロ5年目。昨季も2年連続全試合に出場。打率・322、29本塁打、85打点。プレミア12の侍ジャパンにも選出された日本を代表するスラッガー。体調以外を心配する必要はないのかもしれない。
ただ、キャンプイン直後、本人は珍しく弱音を吐いた。
「全然飛ばなくてダメやなと思っています」
キャンプイン当初、フリー打撃でも打球が上がらなかった。
記者は原因はプレミア12にあると見ていた。当初はクリーンアップを任されていたが、結果が出ずスタメンを外される試合が多くなった。大会中、外国人特有の動くボールに合わせるために打撃フォームを変えていた。シーズン中のゆったりとしたタイミングのとり方から、コンパクトに素早く対応できるようにタイミングのとり方を変えていった。キャンプイン当初はその打法を引きずっているように見えた。
「プレミア12の感覚はあります。構え、トップの位置、ベストの形を探しながらいろいろ試しながら常にレベルアップしたい。いい形で日々の変化を感じながらボールに対して強いインパクトで芯で捉えられたら。伸びしろはあると思う。強くいい打球でスタンドに入る。いろんな方向に強く打って納得のいく打球を打ち返したい」
この自己分析能力の高さこそが吉田正の最大の強みだ。以前、自身の打撃について「子供のころから教わったことがない」と明かしたことがある。
自分で考え作り上げてきた。だから不調に陥っても自分で問題を分析し、解決できる。そのためスランプが短い。キャンプ、オープン戦の時期は国際大会での経験を経て、さらにレベルアップするための試行錯誤の時間だった。
「去年のオフからトレーニングしてきた。パフォーマンスにどうつなげていくか。結果に左右されることなく続けて行きたい」
まったくブレることのない姿勢。首脳陣もチームメートもそんな姿を見ている。だから主砲への信頼は厚い。(デイリースポーツ・達野淳司)