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【野球】マスクをしない米国人と“くしゃみは口を覆って”の車内放送

 米大リーグ機構によるオープン戦中止の決定を受け、キャンプ地アリゾナから自宅があるワシントン州シアトルに帰るべく、フェニックス空港に向かったのは17日のことだ。

 レンタカーを返し、空港ターミナル行きのシャトルバスに乗る。新型コロナウイルスの感染拡大は国家非常事態宣言が出るほど米国内でも深刻な状況だ。にもかかわらず、車内にいる20人ほどの乗客は誰一人としてマスクをしていない。アリゾナは国内でも感染者が少ない地域だからなのか。カバンのポケットに入れたマスクを取り出せない自分がいた。

 他の人と6フィート(約1・8メートル)の間隔を保つ「ソーシャル・ディスタンシング」はエンゼルスの取材現場でも話題になった。バスの車内にいるアジア人は記者ただ一人。意識しすぎかなと思いつつもわずかに空いていた席に座ることはやめておいた。

 「ハークション!」

 バスが走り出してすぐのこと。記者から2メートルほど離れた席に座る若い男性が大きなくしゃみをした。周囲の視線が一点に集まる。いつもならここで周囲から「BLESS YOU(お大事に)」という気遣いの声があり、くしゃみをした人が「THANK YOU(ありがとう)」と感謝する、微笑ましいやり取りがあるのだが、コロナの影響なのか、誰一人として言葉を掛けない。気まずい沈黙。自分の耳を疑ったのはその直後だ。

 「くしゃみをする際には袖などで口を覆うよう、ご注意ください」

 突然の車内アナウンス。前回空港を利用した2月10日にはなかった注意事項。新型コロナウイルスの影響を実感する出来事だった。

 空港ターミナルに入って周囲を見渡す。利用客、空港職員、掃除係、やはり、ここでもマスクをしている人はわずか。セキュリティーゲートまでに記者が見たのは老夫婦1組と、ゲートチェックをする職員3人だけだった。

 空席だらけの機内。一瞬、不快になったのは、一列後ろに座る年配の女性が着席するやいなや、ひじ掛けやトレーテーブルなど、自分の周辺を携帯用殺菌スプレーで拭き始めた時だ。刺激臭。くしゃみが出そうになるのを必死でこらえた。その女性もマスクはしていなかった。3人のCAも口を覆うことなく接客していた。

 2時間あまりのフライト。シアトル空港に降り立ち、緊張が走る。ワシントン州は米国で初めて感染者が出た地。感染者数も死者数も国内上位にあったからだ。マスクを装着する準備をして機外に出る。しかし、マスクをしていた人は少なく、アジア人ばかり。アリゾナよりは多かったが、それでも数えられる程度だった。

 近くにいた空港職員に聞いてみる。「どうしてマスクをしないのですか?感染の心配はないのですか?」。詰問調にならないように気を付けながら。

 30代と思しき男性職員はこう答えた。

 「僕は健康ですからまず必要ありません。売られているのは防塵用が多く、医療用は病院に行かないと手に入りません。でも、今は病院に行くと感染の恐れがありますからね」

 この発言が100%正しいとは思わないが、これが米国人の一般的な考えなのだろう。 話は少し脱線するが、花粉症の季節でも薬は飲むが、マスクをしないのが米国人だ。自宅近くの薬局でマスクをしない理由を聞いてみた。

 「CDC(米疾病予防管理センター)がマスクは予防には効果がないと言ってるからね。マスクの質にも関係してると思うけど」

 3月17日は聖パトリックの祝日だ。アイルランドにキリスト教を広めた聖人の命日。空港から自宅に向かう途中でアイリッシュパブの前を通り過ぎる。例年、シャムロックの色にちなみ緑を身に付けた酔っ払いでごった返す通りは怖いほど静かだった。(デイリースポーツ米国駐在記者・小林信行)

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