【野球】火の玉で三振奪う球児の鉄則

 今季途中から不動の守護神として活躍した阪神・藤川球児投手(39)。圧巻のパフォーマンスを支えたのは、全盛期を思い起こさせる切れ味鋭いストレートだった。不惑を前にしても直球で勝負できる理由と三振を奪う狙いは、豊富な経験に裏打ちされた、ある“鉄則”にあった。

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 今季56試合に登板して4勝1敗、23ホールドで16セーブ。セーブ機会でのセーブ失敗は一度もなく、防御率は驚異の1・77をマークした。

 球種別の内訳を見ると、ストレートは全体の74・0%を占める。DeNA・エスコバーが65・6%で広島・フランスアは63・0%。速球主体で打者をねじ伏せる外国人投手よりも割合は多い。投球回56で奪三振83と、イニング数より三振数がはるかに上回っている。

 藤川は以前、1死一、二塁で併殺を取るのは抑えの仕事ではないと口にしたことがあった。「僕たちは外野フライでも三振でもいいから、2アウトにすること。三振が一番いいし、三振を取ったら3アウト目はどっちでもいい」と右腕は言う。

 その考えの根底には、大リーグで主流の「運や味方の守備力などの要素を除いた投手能力」を測る指標の存在がある。「どれだけボールが前に飛んでアウトを取れているか、どれだけ前に飛ばずにバッテリー間でアウトを取れているか、それがリリーフとして大事な数字」とうなずく。

 先発なら野手を動かしてリズムを作ることも重要。だが「フライなら取るだけでいい。三振なら前に飛ばないわけだから。できるだけ、そこの中で抑えるというのは鉄則ですよね。最後に行けば行くほど。僕らは流れを止める役割だから」と断言する。緊迫した試合終盤では“外的要素”の排除が必要。その結果、直球で三振を奪うことにつながっている。

 試合状況に相手打者、味方の守備布陣に加え、球場の風までも把握した上で登板している。「元々、先発だったので。野村(元)監督や星野さんに、徹底的に戦略をたたき込まれて」。若き日の先発経験が、39歳になった守護神を支えている。

 その経験を伝えるのは自らの使命だ。「後輩には伝えているし、だいぶみんなに浸透してきている。梅野にも、もちろんたたき込んだつもり」。12球団トップの防御率3・46をマークした今季の猛虎投手陣。藤川のチームへの尽力は、この数字と無関係ではないと考えられる。来季の鉄壁リリーフ陣構築に、やはり藤川の存在は欠かせない。(デイリースポーツ阪神担当・向亮祐)

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